何一つ[語句情報] » 何一つ

「何一つ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

何一つの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
尾生の信」より 著者:芥川竜之介
なった。それがこう云う私に宿っている魂なのである。だから私は現代に生れはしたが、何一つ意味のある仕事が出来ない。昼も夜も漫然と夢みがちな生活を送りながら、ただ、....
偸盗」より 著者:芥川竜之介
ている大きな夜の空と、その中にかかっている小さな白い月と、それよりほかのものは、何一つはっきりとわからない。 「おじいさん。」 老婆は、血の交じった唾《つば》....
戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
た。すると、折り返して来た手紙には、始めからしまいまで猛烈な非難の文句のほかに、何一つ書いてない。 自分はあなたの八犬伝といい、巡島記といい、あんな長たらしい....
疑惑」より 著者:芥川竜之介
はなはだ泰平に暮す事が出来た。が、同時にまた、参考書と着換えとを入れた鞄のほかに何一つない私自身を、春寒く思う事も度々あった。 もっとも午後は時折来る訪問客に....
」より 著者:芥川竜之介
かしたのも見える。 この姿見のある部屋には、隣室の赤児の啼《な》き声のほかに、何一つ沈黙を破るものはない。未《いまだ》に降り止まない雨の音さえ、ここでは一層そ....
報恩記」より 著者:芥川竜之介
を知るものは、わたしのほかにはありますまい。(皮肉に)世間の善人は可哀そうです。何一つ悪事を働かない代りに、どのくらい善行を施《ほどこ》した時には、嬉しい心もち....
邪宗門」より 著者:芥川竜之介
渾名《おんあだな》こそ、御受けになりましたが、誠に御無事な御生涯で、そのほかには何一つ、人口に膾炙《かいしゃ》するような御逸事と申すものも、なかったからでござい....
」より 著者:芥川竜之介
、卓《テーブル》に肘をついている。彼の周囲にあるものは、客も、給仕も、煽風機も、何一つ目まぐるしく動いていないものはない。が、ただ、彼の視線だけは、帳場机の後の....
袈裟と盛遠」より 著者:芥川竜之介
知った時、己が一時嫉妬を感じたのは事実だった。しかしその嫉妬も今では己の心の上に何一つ痕跡《こんせき》を残さないで、綺麗に消え失せてしまっている。だから渡《わた....
首が落ちた話」より 著者:芥川竜之介
いたか、その間にどんな事件がどんな順序で起ったか、こう云う点になると、ほとんど、何一つはっきりしない。とにかくその間中何小二は自分にまるで意味を成さない事を、気....
毛利先生」より 著者:芥川竜之介
誤訳は? 自分は実際その時でさえ、果してそれがほんとうの誤訳かどうか、確かな事は何一つわからずに威張《いば》っていたのである。 ――――――――....
青年と死」より 著者:芥川竜之介
か。 B それは明日にも死ぬかもわからないさ。けれどもそんな事を心配していたら、何一つ面白い事は出来なくなってしまうぜ。 A それは間違っているだろう。死を予想....
俊寛」より 著者:芥川竜之介
《もとやす》に頼んでやった。が、基安は取り合いもせぬ。あの男は勿論役目のほかは、何一つ知らぬ木偶《でく》の坊じゃ。おれもあの男は咎めずとも好《い》い。ただ罪の深....
妖婆」より 著者:芥川竜之介
って、じっと耳を澄ませましたが、襖一重向うに隠れている、お敏のけはいを除いては、何一つ聞えるものもありません。すると婆は益々眼をぎょろつかせて、「聞えぬかいの。....
」より 著者:秋田滋
わたくしの生命そのものだったのであります。彼女を措いて、わたくしにはもうこの世に何一つ期待するものはありませんでした。わたくしは何ものも、何ものも望まなかったの....