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余勢
「余勢〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
余勢の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「身投げ救助業」より 著者:菊池寛
のつい近くにある淋しい木造の橋である。インクラインのそばを走り下った水勢は、なお
余勢を保って岡崎公園を回って流れる。そして公園と分かれようとするところに、この橋....
「癩」より 著者:島木健作
ると胸先をかけ巡り、次の瞬間には非常な勢いで口の中に迸り出て、満ち溢《あふ》れた
余勢で積み重ねた封筒の上に吐き出されたのであった。 血だ。 ぼったりと大きな....
「恐怖城」より 著者:佐左木俊郎
紀久子の寝巻の肩へ、牡丹《ぼたん》の花の模様のように広がった。そして、蔦代の手の
余勢はベッドの夜具の上にばたりと落ちた。同時に、血糊は夜具の上にも赤黒い模様を描....
「近時政論考」より 著者:陸羯南
起こるは偶然に起こるものにあらず、必ず時弊に応じて起こるを常とす、当時なお封建の
余勢を承け三百年太平の後に当たり、人心散乱公同の思想なく、民風卑屈自立の気象なし....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
微光に反射するからであろう。 船が滝壺に墜落もうとした。一つ大きく傾いた。その
余勢で先へ進んだ。そうして船は助かった。 泡沫が船底に仆れている庄三郎の体へ降....
「黄鳥の嘆き」より 著者:甲賀三郎
、その後間もなく家産が傾き始め、長男の代にはもういけなくなった。然し、未だ旧家の
余勢で、その子の安蔵の所へは、公家の某家から片づいている。然し、家の方は僕が発見....
「工場細胞」より 著者:小林多喜二
ていたハンドルの職工がグイと手元にひいた。グレーンがとまると、ワイヤー・プレーは
余勢でゆるく揺れた。その度にチエンが、ギーイ、ギーイときしんだ。周わりを取巻いて....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
どんな無理をしても幕府の頽勢を盛り返し、自己にそむくものは討伐し、日光山大法会の
余勢と水戸浪士三百五十余人を斬った権幕とで、年号まで慶応元年と改めた東照宮二百五....
「思い出草」より 著者:寺田寅彦
を向こうに蕎麦の花」というのがあったことを思い出す。いかにも十分十句のスピードの
余勢を示した句で当時も笑ったが今思い出してもおかしくおもしろい。しかしこんな句に....
「重兵衛さんの一家」より 著者:寺田寅彦
影響を及ぼしたと考えらるるような旧師や旧友がだんだんに亡くなって行く、その追憶の
余勢は自然に昔へ昔へと遡って幼時の環境の中から馴染の顔を物色するようになる。そう....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
姿の、その右の眼が突き抜かれていた。それも尋常な抜き方ではない。看板を貫いたその
余勢で、掛け小屋の板壁を貫いていた。小柄を投げてもこうはいかない。 甚内....
「オフェリヤ殺し」より 著者:小栗虫太郎
それはまったく、電光のような敏ばやさで、ハッと感じた小保内も、剣を引く隙がなく、
余勢が孔雀の心臓を貫いてしまった。 その刹那、孔雀の全身が像のように静止して、....
「まあまあ居士の弁」より 著者:浅沼稲次郎
とかと弥次って研究団の発会式も思うように行かなかった。その上に文化同盟の連中は、
余勢をかって臨時学生有志大会を開いて盛んに気勢を挙げた。 その日私は、先日なく....
「妻」より 著者:神西清
肥の滲みた堅い雪のかけらが道から跳ね飛んで、ぴしりと私の顔を打った。ひた奔る馬は
余勢を駆って、上りも下りに劣らぬ疾さで駈けあがる。で私は、トロイカがもう平地に出....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
ら弧を描いて、三名引山、滝倉岳(陸測五万、駒ヶ岳)、僧ヶ岳と、低いながらも強弩の
余勢は流石に筋張った処がある。殊に三名引山のあたりは峰頭が幾多の岩骨を剥き出して....