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「偏に〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

偏にの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
婦系図」より 著者:泉鏡花
て、ただくるくると働く目に、一目輝くと見たばかりで、意気地なくぺたぺたと坐って、偏に恐入ってお辞儀をする。 「御免なさいよ。」 と優い声、はッと花降る留南奇の....
春昼」より 著者:泉鏡花
を圧して菜種の花。眩い日影が輝くばかり。左手の崕の緑なのも、向うの山の青いのも、偏にこの真黄色の、僅に限あるを語るに過ぎず。足許の細流や、一段颯と簾を落して流る....
小春の狐」より 著者:泉鏡花
、虚空に澄んで、月天の御堂があった。――幼い私は、人界の茸を忘れて、草がくれに、偏に世にも美しい人の姿を仰いでいた。 弁当に集った。吸筒の酒も開かれた。「関ち....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
、ここから見えるその村の橋も、鶴谷の手で欄干はついているが、細流の水静かなれば、偏に風情を添えたよう。青い山から靄の麓へ架け渡したようにも見え、低い堤防の、茅屋....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
に衝と開いて、身構えて、 (何、私信を見た上、用件を御承知になりましたな。) 「偏に申訳をいたします。電報を扱います節、文字は拾いますが、文字は普通……拾います....
白金之絵図」より 著者:泉鏡花
詰って、情なくも教を頂く師には先立たれましたる老耄。他に縋ろうようがない。ただ、偏に、令嬢様と思詰めて、とぼとぼと夢見たように参りました。 が、但し、土地の、....
神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
、夜の花の朧と思え。…… どの道、巌の奥殿の扉を開くわけには行かないのだから、偏に観世音を念じて、彼処の面影を偲べばよかろう。 爺さんは、とかく、手に取れそ....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
下へ、どしんと響く。 弦光は坐り直して、 「出直しだ、出直しだ。この上はただ、偏に上杉さんに頼むんだ。……と云って俺も若いものよ。あの娘を拝むとも言いたくない....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
ございます。私がどうやらその後人並みの修行ができて神心が湧いてまいりましたのは、偏に神様のおさとしと、それから私の為めに和やかな思念を送ってくだされた、親しい人....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
吾等の力に及ぶ証明を以て、汝等の考慮に供するにとどまる。これを採用すると否とは、偏に汝等の公明正大なる心の判断に任せるより外に道がない。 われ等の所説を裏書す....
佐藤春夫氏の事」より 著者:芥川竜之介
」の如き、皆然らざるはあらず。これを称して当代の珍と云う、敢て首肯せざるものは皆偏に南瓜を愛するの徒か。....
多神教」より 著者:泉鏡花
つもの山つものの献上を、は、はッ、御覧の如く清らかに仕りまする儀でござりまして、偏にこれ、貴女様御威徳にござります。お庇を蒙りまする嬉しさの余り、ついたべ酔いま....
三枚続」より 著者:泉鏡花
、畳に生した根も葉も無く、愛吉は退散しそうに見える。 按ずるに煽ぐという字は火偏に扇である、しかればますます奴の※が盛になっても、消えて鎮まるべき道理はないが....
式部小路」より 著者:泉鏡花
も、ねえ、愛吉、姫様がついている人なんか、ねえ。」 いささかもその意を解せず、偏に膝を揺って、 「御、御、御串戯おっしゃらあ。」 「ちょいと、愛吉さん、」 ....
ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
もせよ、確にそう見えた、と多津吉は言うのである。 ――聞きがきする私のために、偏にこれは御承認を願いたい。 山の上の墓地にして、まばらな松がおのずから、墓所....