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入歯
「入歯〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
入歯の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
に、鯛がある、味を知って帰れば可いに。――と才発けた商人風のと、でっぷりした金の
入歯の、土地の物持とも思われる奴の話したのが、風説の中でも耳に付いた。 叔父は....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
と可哀な声。 「変な声だあ。」 と頭は棒を揺って震える真似する。 「この方、総
入歯で、若い娘の仮声だちね。いえさ、したが何となく返事をしそうで、大に張合が着き....
「競馬」より 著者:犬田卯
う。 塚田屋というのは彼の知り合いの時計屋である。最近地金の騰貴につけ込んで、
入歯でも金時計でも万年筆でも、金と名のつくものなら何でも買入れていることを彼は知....
「蠅男」より 著者:海野十三
不明だ」 「歯から区別がつかなかったんですか」 「自分の歯があれば分るんだが、総
入歯なんだ。総
入歯の人間だから老人と決めてもよさそうだが、この頃は三十ぐらいで総....
「巴里祭」より 著者:岡本かの子
とを彼女の派手な姿がいくらか追い散らした。此の垢でもろけた家並の中に、まるで金の
入歯をしたようにバル・デ・トロア・コロンヌだとか、バル・デ・ファミイユだとか、メ....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
かれたのもあり、年々に脱落して、現在あます所は上歯二枚と下歯六枚、他はことごとく
入歯である。その上歯二枚が一度に抜けたのであるから、上頤は完全に歯なしとなって、....
「はなしの話」より 著者:岡本綺堂
かれたのもあり、年々に脱落して、現在あます所は上歯二枚と下歯六枚、他はことごとく
入歯である。その上歯二枚が一度に抜けたのであるから、上頤は完全に歯なしとなって、....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
から、一日中母の眼を避けて、父は紡車に獅噛みついていたのでしたわ。そのうえ、上の
入歯を紛くしたせいもあったでしょうか、いやに下唇ばかり突き出てしまって、それを見....
「方子と末起」より 著者:小栗虫太郎
ように波うたせ、そっと立ちあがる。ことに、夜のお祖母さまの怪ものめいた相貌――。
入歯をとったあとの、歯齦がお鉄漿のようにみえ、結ぶと、口からうえがくしゃくしゃに....
「入梅」より 著者:久坂葉子
強く抱きしめた両手の中で行雄はどたばたしていた。 作衛は今頃、汽車にのって
入歯をかたかたさせながらどんな気持だろうか、だが、そんなことはどうでもよかった。....
「春泥」より 著者:久保田万太郎
えたところをかれはみせた。――それほど血気にみちたかれだった…… 折った前歯は
入歯によって以前通りにすることが出来た。が、頬の傷はそうは行かなかった。あとまで....
「思い出の記」より 著者:小泉節子
表面の親切らしいのが大嫌いでした。悪い方の眼に『入墨』をするのも、歯を脱いてから
入歯をする事も、皆虚言つき大嫌いと云って聞き入れませんでした。耶蘇の坊さんには不....
「風流仏」より 著者:幸田露伴
ておもしろい事はないぞ、いまだに其頃を夢に見て後での話しに、此間も嫗に真夜中|頃
入歯を飛出さして笑ったぞ、コレ珠運、オイ是は仕たり、孫でも無かったにと罪のなき笑....
「鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
が不思議でした。小作りな痩せ形な人で、色は浅黒く、人並より鼻が高いのでした。歯は
入歯でしたが、それが鉄漿でも附けたかのように真黒で、黄楊で造らせたとのことでした....
「泡盛物語」より 著者:佐藤垢石
ういって、あば辰は大きな掌を開いてみせた。私は、その掌を覗いた。掌の上に、金の総
入歯がぴかぴか光っている。あば辰と樺太は、私を新米、新米と呼んでいた。 この総....