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「冠る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

冠るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
新生」より 著者:島崎藤村
ず岸本は自分で自分の鞭《むち》を背に受けねば成らなかった。心に編笠《あみがさ》を冠る思いをして故国を出て来たものがこの眼に見えない幽囚は寧《むし》ろ当然のことの....
河明り」より 著者:岡本かの子
していた。口も眼のように竪に開いていた。小鼻も喘いで膨らみ、濃い眉と眉の間の肉を冠る皮膚が、しきりに隆まり歪められ、彼女に堪え切れないほどの感情が、心内に相衝撃....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
の鞣革胴の安鎧に載っているのは、錣を見れば判るだろう。あれは、位置の高い若武者が冠る獅子噛台星前立脇細鍬という兜なんだ。また、こっちの方は、黒毛の鹿角立という猛....
島原の乱」より 著者:菊池寛
い。老臣黒田|睡鴎追い付いて諫めたので、鎧は着けたが、猶|冑を冠らない。 冑を冠ると左右が見えない等と理屈を云い乍ら進むと、城の部将本渡の但馬五千を以て逆襲し....
千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
を冠り、藁靴を穿き、女は紺色染の真綿を亀の甲のように背中に負って家の内でも手拭を冠る。それがこの辺で眼につく風俗だ。休茶屋を出て川の岸近く立って眺めると上高井の....
敵討札所の霊験」より 著者:三遊亭円朝
倒され、善之進は驚き後へ下って、細身の一刀を引抜いて、 善「なゝ何者」 と振り冠る。 又「おゝ最前の遺恨思い知ったか」 と云う若気の至り、色に迷いまして身を....
楢重雑筆」より 著者:小出楢重
、恋愛の相手が見当たらぬようなものでいらいらするのだ。 額縁は帽子ほど万人が皆冠るものでないから三十年も時代が遅れるのも無理はないが、今少しわれわれの帽子屋が....
めでたき風景」より 著者:小出楢重
の帽子を見るに、何ゆえか素晴らしく大きなもので、殊に前後へ間延びしている。師直が冠る帽子の如く、赤垣源蔵のまんじゅう笠でもある。 一体、何が中に入っているかと....
化銀杏」より 著者:泉鏡花
りがあるよ、おい。」 と板敷に投出せば、(ちょいとこさ)は手に取りて、高帽子を冠ると斉しく、威儀を正して出行きたり。 出行く(ちょいとこさ)を見送りて、二人....
南蛮秘話森右近丸」より 著者:国枝史郎
勘八を向うへ突き倒し、その手を帯へ差し入れたが、抜いて握ったは嗜みの懐刀、振り冠ると凜々しく叱咤した。 「そうとも知らず連れ込まれたは、妾の油断には相違ないが....
戯作者」より 著者:国枝史郎
ありゃありゃ、お隠れお隠れ、血塊々々、ソレソレソレソレ」 ふたたびスッポリ桶を冠るとやがてユサユサと歩き出した。 後を見送った曲亭馬琴は、笑うことさえ出来な....
郷介法師」より 著者:国枝史郎
はその儘寝所へ戻って行ったが、海外貿易で鍛えた胆、そんな事にはビクともせず夜具を冠ると眼を閉じた。間もなく鼾の聞こえたのは眠りに入った証拠である。 五万両と大....
わが童心」より 著者:佐藤垢石
の二つの山は、平野から北へ眺める一番深い山である。十月半ばには、毎年頭に白い雪を冠る。里の人々は『越後山に雪が降ったから、そろそろ稲刈りがはじまるだんべ』という....
レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
旧教僧侶の着る如き長き黒衣を肩より垂れ、胸に紅き薔薇花をさす。青白き少年の仮面を冠る。 独白―― レモンの花の咲く南方の暖国はここであります。黄昏は薔薇色の光....
五重塔」より 著者:幸田露伴
色、円道様も為右衛門様も定めし肝を煎っておらるるじゃろ、さっさと頭巾なり絆纏なり冠るとも被るともして出かけさっしゃれ、とやり返す。大丈夫でござりまする、御安心な....