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「冴え〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

冴えの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
西郷隆盛」より 著者:芥川竜之介
しなくなった。女連れの客が立った後には、硝子の花瓶にさした菜《な》の花ばかりが、冴え返る食堂車の中にかすかな匂を漂わせている。本間さんは白葡萄酒の杯を勢いよく飲....
星座」より 著者:有島武郎
思った。 その時農学校の時計台から五時をうつ鐘の声が小さくではあるが冴《さ》え冴えと聞こえてきた。 おぬいさんの家の界隈《かいわい》は貧民区といわれる所だっ....
婦系図」より 著者:泉鏡花
で、クウクウと吹き鳴らすと、コロコロと拍子を揃えて、近づいただけ音を高く、調子が冴えてカタカタカタ! 「蛙だね。」 と莞爾した、その唇の紅を染めたように、酸漿....
親子」より 著者:有島武郎
雲一ひらもなく澄みわたった空の高みに、細々とした新月が、置き忘れられた光のように冴えていた。一同は言葉少なになって急ぎ足に歩いた。基線道路と名づけられた場内の公....
宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
できた。 しかして残りの黄味は 日中を照らす太陽となり そして残った白味は 夜の冴えた月となった。 しかし卵の中でいろいろなものは 天の多くの星になった。 そう....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
痩せた肩を抱いて、 「ああ、霜に響く。」……と言った声が、物語を読むように、朗に冴えて、且つ、鋭く聞えた。 「按摩が通る……女房さん、」 「ええ、笛を吹いてです....
女客」より 著者:泉鏡花
傾く、面に映って、頸をかけ、黒繻子の襟に障子の影、薄ら蒼く見えるまで、戸外は月の冴えたる気勢。カラカラと小刻に、女の通る下駄の音、屋敷町に響いたが、女中はまだ帰....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
……もう笠は外して脊へ掛けて……絞の紅いのがね、松明が揺れる度に、雪に薄紫に颯と冴えながら、螺旋の道条にこう畝ると、そのたびに、崖の緋葉がちらちらと映りました、....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
|半※でおさえたが、且は桔梗紫に雁金を銀で刺繍した半襟で、妙齢の髪の艶に月の影の冴えを見せ、うつむき加減の頤の雪。雪のすぐあとへは惜しいほど、黒塗の吾妻下駄で、....
世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
彼はほこりだらけの旅装束のままで、すぐに仕事に没頭した。大理石はアウレリウスの冴えた槌の音をそのままに反響した。彼は長い間、誰をも仕事場へ入れずに、一心不乱に....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
奥山でよくきき慣れた時鳥の声に幾分似たところもありますが、しかしそれよりはもッと冴えて、賑かで、そして複雑った音色でございます。ただ一人の話相手とてもない私はど....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
。交霊会の席上に出現する燐光でさえもが、右にのぶる如き好条件の下にありては、青く冴え亘って煙がない。之に反して条件が悪ければ其光が鈍く汚く燻っている。 註――当....
怨霊借用」より 著者:泉鏡花
京阪地の方だそうで、長逗留でござりました。――カチリ、」 と言った。按摩には冴えた音。 「カチリ、へへッへッ。」 とベソを掻いた顔をする。 欣七郎は引入....
」より 著者:秋田滋
れ、その棺のうえに土がかけられてしまうと、わたくしの精神は、突如として、はッきり冴えて来たのであります。わたくしは怖ろしい精神的な苦しみを悉に甞めたのであります....
北海道に就いての印象」より 著者:有島武郎
装う小春。それは山といわず野といわず北国の天地を悲壮な熱情の舞台にする。 或る冴えた晩秋の朝であった。霜の上には薄い牛乳のような色の靄が青白く澱んでいた。私は....