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冷たい
「冷たい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
冷たいの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
ら絶望的な勇気が、わいてくる。血の色を失った彼は、黙って、土にひざをつきながら、
冷たい両手に堅く、沙金《しゃきん》の手をとらえた。
彼らは二人とも、その握りあ....
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
かった。本を、――殊に世紀末の欧羅巴《ヨーロッパ》の産んだ小説や戯曲を。彼はその
冷たい光の中にやっと彼の前に展開する人間喜劇を発見した。いや、或は善悪を分たぬ彼....
「影」より 著者:芥川竜之介
があった。
その沈黙はたちまち絞《し》め木《ぎ》のように、色を失った陳の額へ、
冷たい脂汗《あぶらあせ》を絞り出した。彼はわなわな震《ふる》える手に、戸のノッブ....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
、川一つ隔てた藪や林は、心細い響を立て易かった。お蓮は酒臭い夜着《よぎ》の襟に、
冷たい頬《ほお》を埋《うず》めながら、じっとその響に聞き入っていた。こうしている....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
」
慎太郎は父の云いつけ通り、両手の掌《たなごころ》に母の手を抑えた。母の手は
冷たい脂汗《あぶらあせ》に、気味悪くじっとり沾《しめ》っていた。
母は彼の顔を....
「路上」より 著者:芥川竜之介
た。
が、そう呟くか呟かない内に、もう一度かすかに雷《らい》が鳴って、ぽつりと
冷たい滴《しずく》が頬に触れた。続いてまた一つ、今度は触るまでもなく、際どく角帽....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
て思わず、声を立てて泣いた。その声にふと眼がさめた時、涙は実際彼の煩《ほお》に、
冷たい痕《あと》を止《とど》めていた。彼はそれから身を起して、かすかな榾明《ほた....
「秋山図」より 著者:芥川竜之介
内されました。ここも紫檀《したん》の椅子《いす》机が、清らかに並べてありながら、
冷たい埃《ほこり》の臭《にお》いがする、――やはり荒廃《こうはい》の気が鋪甎《ほ....
「藪の中」より 著者:芥川竜之介
いていたのは、怒りでもなければ悲しみでもない、――ただわたしを蔑《さげす》んだ、
冷たい光だったではありませんか? わたしは男に蹴られたよりも、その眼の色に打たれ....
「或る女」より 著者:有島武郎
からさえざえしていた気分が、沈みかけた秋の日のように陰ったりめいったりし出して、
冷たい血がポンプにでもかけられたように脳のすきまというすきまをかたく閉ざした。た....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
んとも言えぬうつらうつらした気分なのでございます。傍からのぞけば、顔が痙攣たり、
冷たい脂汗が滲み出たり、死ぬる人の姿は決して見よいものではございませぬが、実際自....
「杜子春」より 著者:芥川竜之介
この世と地獄との間には、闇穴道という道があって、そこは年中暗い空に、氷のような
冷たい風がぴゅうぴゅう吹き荒んでいるのです。杜子春はその風に吹かれながら、暫くは....
「初雪」より 著者:秋田滋
十二月のこえを聞く頃になると、雪が降って来た。その頃になると、彼女は凍ったように
冷たい屋敷の空気がいよいよ辛くなって来た。人間は齢を重ねるにつれてその肉体から温....
「親ごころ」より 著者:秋田滋
をあてがわれ、他人の残りものを食べて露命をつなぎ、夜はまた夜で、寒さに悩みながら
冷たい板の間で旅寐の夢をむすぶ身となった。こうした苦労がつもり積って、夫婦はめっ....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
だ小さな穴のみをうがち、生命をつくりあげている血が流れるのを眺め、それが柔かな、
冷たい、動かない、考えることもしない一塊りの肉にほかならないと思うのは、必ずや不....