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冷風
「冷風〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
冷風の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「本州横断 癇癪徒歩旅行」より 著者:押川春浪
はず》である。吾輩は帽子もズボンもズブ濡れで、腰から上は丸裸、山頂の雲霧を交えた
冷風がヒューヒュー吹き付けるのだから堪ったものではない。シャツや上衣《うわぎ》は....
「山月記」より 著者:中島敦
嘯但成※ 時に、残月、光|冷《ひや》やかに、白露は地に滋《しげ》く、樹間を渡る
冷風は既に暁の近きを告げていた。人々は最早、事の奇異を忘れ、粛然として、この詩人....
「吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
か分らんが、ちょっと心を動かしたのである。蒸《む》し熱い夏の夜に一縷《いちる》の
冷風《れいふう》が袖口《そでぐち》を潜《くぐ》ったような気分になる。元来この主人....
「暗黒公使」より 著者:夢野久作
、膝の処が泥だらけになりおれども、顔面には何等苦悶の痕なく、明け放ちたる入り来る
冷風に吹かれおり。ボーイ山本千太郎の言に依れば、窓は初めより明け放ちありて入口の....
「善蔵を思う」より 著者:太宰治
薔薇が在るのだ。八本である。花は、咲いていない。心細げの小さい葉だけが、ちりちり
冷風に震えている。この薔薇は、私が、瞞されて買ったのである。その欺きかたが、浅墓....
「霧陰伊香保湯煙」より 著者:三遊亭円朝
辺では大概これを東に開けますから、何故かと聞きましたら、夏は東から這入りまするは
冷風だと云います。依って東へ窓を開け、之をざまと申します。雨が降ったり暗かったり....
「田舎者」より 著者:豊島与志雄
。彼の肩をかすめ、戸棚にぶつかり、大きな音を立てて、その息苦しい淀んだ空気の中に
冷風を吹きこんだようで、砕け散った。 それが、誰にも――角刈の男自身にも――何....
「秋の気魄」より 著者:豊島与志雄
ではなくて、生活をしつくした初老の人の赤毛である。 生活力のない紅葉は、一夜の
冷風に散ってゆく。そしてこの落葉こそ、本当の秋のものである。庭に散り落ちる桐の一....
「日記」より 著者:宮本百合子
の憐れさで一生自動車にのらない発心が出来ようか。 六月五日(火曜)晴 軽らかな
冷風が流れ、快よい朝。きのうの晩九時頃、才の編物教師のところで会ったと云う陸軍大....
「すっぽん」より 著者:佐藤垢石
割りのそぎ身と煮つけ、かますの塩焼きなどを飽喫している。 また、川魚では初秋の
冷風に白泡をあげる峡流の奥から下ってくる子持ち鮎の旨味と、木の葉|山女魚の淡白に....
「姫柚子の讃」より 著者:佐藤垢石
の峡間に臨むこの温泉の村は秋たけて、崖にはう真葛の葉にも露おかせ、障子の穴を通う
冷風が肌にわびしい。私は流れに沿った一室に綿の入った褞袍にくるまり、小杯を相手と....
「レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
一列は室を廻りて下手に半円形を造りて、立ち並ぶ。巨人のみ中央に立つ。無音。鬼気。
冷風。――然り冥府の如き冷たき光影! ヨハナーンは巨人の姿を見るや絶叫す) 少年....
「鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
でいると、パラパラと大粒な雨! 黙しぬいていた闇の一角から、にわかに、気味の悪い
冷風がサーッと一陣に揺すり立ててきた。 「あ! とうとう降り出してきやがッた」 ....
「三国志」より 著者:吉川英治
またも、宵にみた夢と同じ夢を見た。 夢の中には、一|痕の月があった。墨のごとき
冷風は絶え間なく雲を戦がせ、その雲の声とも風の声ともつかない叫喚がやむと、寝所の....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
、正成の指揮ぶりには、その日も何らさしせまったふうはなかった。おそらくは、晩雲の
冷風に、 「雨、近し」 と察して、さいご的な戦法をとったものと思われる。 そ....