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前垂れ
「前垂れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
前垂れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
込むでねえか。這入るのなら早く這入って来《こ》う」
紺《こん》のあつしをセルの
前垂れで合せて、樫《かし》の角火鉢《かくひばち》の横座《よこざ》に坐った男が眉《....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
。かんがえると実に可哀そうだ。わたしも察していますよ」 お豊は急にうつむいて、
前垂れの端《はし》をひねっていたが、濃い睫毛《まつげ》のうるんでいるらしいのが半....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
かった。三度つづけて呼ぶうちに、その声を聞きつけて、裏の井戸端からお冬が濡れ手を
前垂れで拭きながら出て来た。 お冬は十五にしては大柄の方で、源蔵の云った通り、....
「家霊」より 著者:岡本かの子
ので薄倖を想わせる顔付きの老人である。その儒者風な顔に引較べて、よれよれの角帯に
前垂れを掛け、坐った着物の裾から浅黄《あさぎ》色の股引《ももひき》を覗かしている....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
てやると、裏店《うらだな》の男の児はおどろいたように彼の顔をみあげていた。女房は
前垂れで濡れ手をふきながら礼を云った。 「どうも済みませんねえ。こんなものをいた....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
ように、なるたけ顔を隠して先ず牡丹餅を食った。それから汁粉を食った。銭を払って、
前垂れで口を拭いて、逃げるようにこそこそと出て行った。 講武所ふうの髷に結って....
「天馬」より 著者:金史良
ふと笑った。頽廃のかげりを宿した彼女の頬には紅潮がほんのりとさし現われ、ちぢれた
前垂れの髪はゆらぐかの如く見えた。玄竜は急に痙攣でも起したように強ばって、ぐっと....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
と、向直って、抜いた花簪を載せている、涙に濡れた、細り畳んだ手拭を置いた、友染の
前垂れの膝を浮かして、ちょっと考えるようにしたっけ。その手拭を軽く持って、上気し....
「絶景万国博覧会」より 著者:小栗虫太郎
れども、その時は合の襖を開いた途端に、光子は危く声を立てようとし、後探りに杉江の
前垂れの端を、思わずも握り締めた。それは雪洞の灯を掻き立てようとしたのであろう、....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
愛くるしいきりょうであった。赤い襷を綾取って、二の腕の上まで袂をかかげ、その腕を
前垂れで拭きながら、甚三を眺めて笑った様子には、片輪者らしいところもなく、野菊の....
「西航日録」より 著者:井上円了
ヤソの画像を安置し、その前に灯明を掲げ、ロシアの特色を示せり。また、駅夫が白色の
前垂れを着しおるも、特色の一つなり。これよりロシアの汽車に乗り換え、夜一時発車。....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
ところなり。街上の婦人を見るに、頭に風呂布をかぶり、その上に物貨をいただき、前に
前垂れをしめて来往す。そのありさまもまた東洋に同じ。露店には大傘を立てかけ、その....
「善いことをした喜び」より 著者:小川未明
さんは独り言をしながら、しわの寄ったてのひらに銭を並べて、細い指先で勘定しては、
前垂れの中に移していました。そして、すっかり勘定してしまったら、それを財布の中に....
「気にいらない鉛筆」より 著者:小川未明
やさしくたずねてくださいました。 きよは、泣いたりして恥ずかしいと思ったので、
前垂れで、涙をふきました。 「私が、まちがって、ちがった鉛筆を買ってきましたので....
「左ぎっちょの正ちゃん」より 著者:小川未明
これは、緑色だろう。」 「そう、こんな黒いのもあったよ。」 洋服のポケットや、
前垂れのポケットの中にいれて、チャラ、チャラと鳴らしていましたが、いつのまにか、....