前程[語句情報] »
前程
「前程〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
前程の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「心中」より 著者:森鴎外
だろうと思うわ。」 「そうでしょうねえ。わたし一時間は慥かに寐たようだから。寝る
前程寒かないことね。」 「宵のうち寒かったのは、雪が降り出す前だったからだよ。降....
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
は一つの顔しか持たぬ。背《そびら》を過去に向けた上は、眼に映るは煕々《きき》たる
前程のみである。後《うしろ》を向けばひゅうと北風が吹く。この寒い所をやっとの思い....
「思い出の記」より 著者:小泉節子
司ヶ谷辺を散歩を致したのが二人で外出した最後でございました。その門は亡くなる二日
前程から取りかかりまして亡くなってから葬式の間に合うように急いで造らせました。....
「ニッケルの文鎮」より 著者:甲賀三郎
もね、亡くなりなすった少し前から一層研究の方にお凝りになったので、自然患者さんも
前程ではなかったようだったわ。ですから奉公人の数も、あたしの来た当座とは少し減っ....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
るや、忽ち右の「挨拶」が御陣屋の玄関に山をなして、半年とたたぬうちに御金蔵が七戸
前程殖えました。しかし、人窮すれば智慧が湧く、言わば迷惑なそのお墨付に対して、だ....
「世界の一環としての日本」より 著者:戸坂潤
角一種の自由主義的水準を打ち樹てつつあるのではないかと思われる。他紙との差異は従
前程目立たぬが、併し『日日』や『読売』に較べて見ると矢張り多少は自由主義新聞の意....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
現の境の幻の道を行くがごとくに感じて、夫人は粛然として見送りながら、遥に美術家の
前程を祝した、誰も知らない。 ただ夫人は一夜の内に、太く面やつれがしたけれども....
「灰色の記憶」より 著者:久坂葉子
た若い子達に何ら心動かされなかった。私は唯、命ぜられたことをやるだけであった。以
前程、給料袋をうれしいとも思わなかったし、人に物を与えて優越感も抱かなかった。給....
「南蛮秘話森右近丸」より 著者:国枝史郎
て姿勢を正し、振り冠った懐刀月光に顫わせ、ムーッと香具師共を睨み付けた。しかし以
前程の元気はない。 「一度に寄せろ、占めた占めた! 女は疲労た、からめ捕れ!」 ....
「明暗」より 著者:岡本かの子
いくらか残っている子供らしい声音を交ぜて、「ああ」と返事をした。けれど、それも以
前程はっきりした歓喜の表現ではなくなっていた。蝉の形、蛇の形、蛙の形、猿の形、犬....
「曲亭馬琴」より 著者:邦枝完二
年御出版の遊人三幅対」 「止しねえ」 「だって、この通りじゃげえせんか。天下に手
前程の学者はなしと云わぬばかりの、小面の憎い納り様が、兄さんの腹の虫にゃ、まるッ....
「斬られの仙太」より 著者:三好十郎
命を投出した男だ。兄きこそ、達者で暮してくれ。オット(グイグイ飲む)……しかしお
前程の男を、惜しいなあ……。 (二人シンミリしてしまって、永い間然って飲む。仙....
「六号室」より 著者:瀬沼夏葉
しんで読んでいたが、この頃は新しい書物も買えぬので、古本ばかり読んでいる為か、以
前程には興味を感ぜぬ。或時徒然なるに任せて、書物の明細な目録を編成し、書物の背に....
「日本の頭脳調べ」より 著者:戸坂潤
大きい不満をもつ大抵の人間の、物理学者的一例であるようだ。博士の最近の評論は、以
前程の鋭さを持たぬようになったと思うが、何かその言説が弁明的な立場に立つからでは....