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劈く
「劈く〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
劈くの前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
も限ら無えが、「知ら無え知ら無え」で通すんだぞ、生じっか…… 此の時ぴーと耳を
劈く様な響きが遠くで起った。其の方を向くと船渠の黒い細い煙突の一つから斜にそれた....
「死の快走船」より 著者:大阪圭吉
に反響して、物凄く空気を顫わせ続ける。 私達を前にして椅子に腰掛けた東屋氏は、
劈くような嵐の音の絶え間絶え間に、落着いた口調で事件の真相を語りはじめた。 「ま....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
んなことがあった。わたしが夜の九時頃に涼みから帰ってくると、徳さんの家のなかから
劈くような女の声がひびいた。格子の外には通りがかりの人や近所の子供がのぞいていた....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
という。もちろん黄金があるのではないけれども実に奇々妙々な岩壁が厳然として虚空を
劈くごとくに峙って居る。その岩壁の向うに玉のごとき雪峰が顔を出して居る。その姿を....
「博物誌」より 著者:岸田国士
うな気がするのだろう。 そして、彼女はひっきりなしに、剣の切っ先のように空気を
劈く調子外れの鳴き声をたてている。 時々、彼女は庭を出て、どこかへ行ってしまう....
「加利福尼亜の宝島」より 著者:国枝史郎
の小人。その衣冠も必ず盗み来たるもの。古廟に群がり睡るは、夜労して昼疲る。西瓜を
劈くはもって蠅を辟くるなりと」 「なるほど」と紋太夫は呟いた。 「支那の昔の賢人....
「雷嫌いの話」より 著者:橘外男
シャリはなかなかもって、新宿どころの騒ぎではない。行く手も後方もピカピカと、雲を
劈く稲妻に囲まれて到頭進退|谷まって、御徒町で電車を降りて、広小路の映画館へ飛び....
「一兵卒」より 著者:田山花袋
かしゃべり立てている。驢馬の長い耳に日がさして、おりおりけたたましい啼き声が耳を
劈く。楊樹の彼方に白い壁の支那民家が五、六軒続いて、庭の中に槐の樹が高く見える。....
「だいこん」より 著者:久生十蘭
夢の中でこたえた。 「だいじょうぶ。ただこうしているだけ。眠ってなんかいないよ」
劈くようなクラークソンの音がきこえたと思うと、ランチがだしぬけに横揺れし、あたし....
「墓地展望亭」より 著者:久生十蘭
の人影もなかった。 怒声と鋭い女の叫び声は、それから暫くつづいていたが、突然、
劈くような一発の銃声が響きわたり、それなりどちらの声も聞えなくなってしまった。 ....
「二つの家を繋ぐ回想」より 著者:宮本百合子
りは、相変らず暗い。ずっと右手に続いた杉林の叢の裡では盛に轡虫が鳴きしきり、闇を
劈くように、鋭い門燈の輝きが、末拡がりに処々の夜を照して居る。 父上は、まだ帰....
「空を飛ぶパラソル」より 著者:夢野久作
へ、フワリフワリと舞い上って行ったが、その方にチラリと眼を奪われた瞬間に、虚空を
劈く非常汽笛と、大地を震撼する真黒い音響とが、私の一尺横を暴風のように通過した。....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
を投げこんで行く時のように、濃い眉毛をがっきりと寄せて。
……鋭い小鳥の声が、
劈くように翔け去ってゆく。風のせいか滝の轟きが急に耳へついて、一朶の雲の裡に、陽....