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南天
「南天〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
南天の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「年末の一日」より 著者:芥川竜之介
まけにお墓のまわりの土もずっと霜に荒されていた。それは九日に手向けたらしい寒菊や
南天の束の外に何か親しみの持てないものだった。K君はわざわざ外套を脱ぎ、丁寧にお....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
、角太郎の楽屋にあてた小座敷であった。 縁伝いで奥へ通ると、狭い中庭には大きな
南天が紅い玉を房々と実らせていた。ふたりは障子の前に立って、十右衛門が先ず声をか....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
の、小鳥の形を、真夜半かけて案じたが、家に帰ると、転げ落ちたまま底に水を残して、
南天の根に、ひびも入らずに残った手水鉢のふちに、一羽、ちょんと伝っていて、顔を見....
「茶の本」より 著者:岡倉覚三
のである。 禅道は道教と同じく相対を崇拝するものである。ある禅師は禅を定義して
南天に北極星を識るの術といっている。真理は反対なものを会得することによってのみ達....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
、持って来い。……勢はさりながら、もの凄いくらい庭の雨戸を圧して、ばさばさ鉢前の
南天まで押寄せた敵に対して、驚破や、蒐れと、木戸を開いて切って出づべき矢種はない....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
、五段ばかり石を築いた小高い格子戸の前を行過ぎた。が溝はなしに柵を一小間、ここに
南天の実が赤く、根にさふらんの花が芬と薫るのと並んで、その出窓があって、窓硝子の....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
はらはらと走って出たのはその娘で。 突然、爺様の背中へ掴まると、手水鉢の傍に、
南天の実の撓々と、霜に伏さった冷い緋鹿子、真白な小腕で、どんつくの肩をたたくじゃ....
「巴里祭」より 著者:岡本かの子
一緒に唇を割って出ると今度は眼の裏のまぼろしに綺麗な水に濡れた自然の手洗石が見え
南天の細かい葉影を浴びて沈丁花が咲いて居る。日本の静かな朝。自分の家の小庭の手洗....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
若山の医療のために百金を得まく、一輪の黒百合を欲して、思い悩んでいるのであろう。
南天の下に手水鉢が見えるあたりから、雨戸を三枚ばかり繰った、奥が真四角に黒々と見....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
、膳の上へ転がしながら、いきなり立上って中縁のような板敷へ出ましたから。……鵯が
南天燭の実、山雀が胡桃ですか、いっそ鶯が梅の蕾をこぼしたのなら知らない事――草稿....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
―別に見るものはなし、人通もほとんどないのですから、すぐ分った、鉢前の大く茂った
南天燭の花を――(実はさぞ目覚かろう)――悠然として見ていた。ほかに、目に着いた....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
境に巣鴨の卯之吉が庭になりまさ。 もみじはここも名物だが、ちと遅い。紅は万両、
南天の実。鉢物、盆石、水盤などが、霞形に壇に並んだ、広い庭。縁には毛氈を敷いて煙....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
名を遠慮した所以である。 それから――暑い時分だから、冷いことも悪くない。――
南天燭の紅い実を目に入れた円い白雪は、お定りその
南天燭の葉を耳に立てると、仔細な....
「妖怪学」より 著者:井上円了
(一六)駕籠に酔わざる呪術 かごに酔う人は、駕籠の戸を開けて乗るべし。
南天の葉を駕籠のうちに立て、それを見て乗れば、かごに酔うことなし。 以上は『秘....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
港。月明らかに風清くして、熱帯にあるを覚えず。いまだ赤道をこえざるも、日はすでに
南天に入る。しかして月なお北天にあり。 二日、晴れ。日中やや炎暑を感ずるも、食....