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単色
「単色〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
単色の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
朝夕の空の模様が春めいて来た事をまざまざと思わせる。北西の風が東に回るにつれて、
単色に堅く凍りついていた雲が、蒸されるようにもやもやとくずれ出して、淡いながら暖....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
やや迫って濃かった。かの女は逸作の所蔵品で明治初期の風俗を描いた色刷りの浮世絵や
単色の挿画を見て知っていた。いわゆる鹿鳴館時代と名付ける和洋混淆の文化がその時期....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
の尖塔や左右の塔櫓が、一|刷毛刷いた薄墨色の中に塗抹されていて、全体が樹脂っぽい
単色画を作っていた。
法水は正門際で車を停めて、そこから前庭の中を歩きはじめた....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
っている。一色のふかい緑は空より濃く、まさに目のゆくかぎりを遮るものも、またこの
単色をやぶる一物さえもないのだ。そうしてついに、この大湿林を抜けることができたの....
「S岬西洋婦人絞殺事件」より 著者:夢野久作
人の刺青の図柄は前述の通りであるが、ロスコー氏自身のものは精密な西洋古代の海戦の
単色彫り。又、東作のは吉原の花魁道中の図で、これは又ロスコー氏の分と正反対に暈か....
「映画芸術」より 著者:寺田寅彦
よっていかなる可能性を展開するかという問題がある。 無声映画の時代にフィルムを
単色に染めることによってあるいは月夜、あるいは火事場の気分を出したことがあった。....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
ドゥニパー湾の水は、照り続く八月の熱で煮え立って、総ての濁った複色の彩は影を潜め、モネーの画に見る様な、強烈な
単色ばかりが、海と空と船と人とを、めまぐるしい迄にあざやかに染めて、其の総てを真....
「雑記帳より(Ⅱ)」より 著者:寺田寅彦
ういう区別があるような気がする。物理学の方面だけで見ると一体にドイツ学派の仕事は
単色で英国派の仕事には色彩の陽炎とでもいったものを伴ったものが多いような気がする....
「物理学実験の教授について」より 著者:寺田寅彦
ッキグラスの厚さを測微計で測らせ、また後に光学の部で再びこれを試験用平面に重ね、
単色光で照らして干渉の縞を示すも有益であろう。 液体静力学の実験例えば浮秤で水....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
、まこと、幻のなかの幻とでもいいたげな奇怪さであった。 けれども、その不思議な
単色画は疑いもない人影であって、数えたところ十人余りの一団だった。 そして、い....
「新春・日本の空を飛ぶ」より 著者:坂口安吾
と同じ形の富士である。天城を越える。三原山のように砂漠がないから、冬の山々はたゞ
単色のヒダが無限にひろがっているだけ、真上からでは下の山々にはヒダだけで高さが存....
「翻訳の生理・心理」より 著者:神西清
好きの方らしいから、別にとり立てて主義主張のあるわけでもない。ただ近ごろはやりの
単色版的飜訳ということでちょっと感じたことがあるので、それでも書いて見よう。 ....
「翻訳のむずかしさ」より 著者:神西清
介なことはない。そこでやむを得ず、色んな便法が講じられることになる。その一例が、
単色版式飜訳という方法だ。 それを一口にいうと、飜訳者は模写だとか原色版だとか....
「江戸芸術論」より 著者:永井荷風
演劇と相並《あいならび》て進歩発達せるなり。然れども当時の板画は悉《ことごと》く
単色の墨摺《すみずり》にして黒色《こくしょく》と白色《はくしょく》との対照を主と....
「院展遠望」より 著者:和辻哲郎
かも日本画家はこの困難な仕事に打ち克とうと努力している。洋画にとっては、ムラなく
単色に塗られた広い画面のごときは、美しいものの相反である。むしろ微妙な数限りのな....