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卸
「卸〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
卸の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「犬と笛」より 著者:芥川竜之介
ました。
ところがある日のこと、髪長彦はいつもの通り、とある大木の根がたに腰を
卸しながら、余念もなく笛を吹いていますと、たちまち自分の目の前へ、青い勾玉《まが....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
があった。赤坊の泣き続ける暗闇の中で仁右衛門が馬の背からどすんと重いものを地面に
卸《おろ》す音がした。痩馬は荷が軽るくなると鬱積《うっせき》した怒りを一時にぶち....
「溺れかけた兄妹」より 著者:有島武郎
若い男は私の指す方を見定めていましたが、やがて手早く担っていたものを砂の上に
卸《おろ》し、帯をくるくると解いて、衣物《きもの》を一緒にその上におくと、ざぶり....
「星座」より 著者:有島武郎
とに、右手を鍵形に折り曲げて頭の上にさしかざし、二度三度物を打つように烈しく振り
卸《お》ろすのだった。
その夕方も園は右手を振ろうとする衝動をどこかに感じたけ....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
せぬ。三樽ばかり船に積んで、船頭殿が一人、嘉吉めが上乗りで、この葉山の小売|店へ
卸しに来たでござります。 葉山森戸などへ三崎の方から帰ります、この辺のお百姓や....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
思うさま、胸にたたんだ空想に耽ろうと、待構えたのはこれからと、まず、ゆっくり腰を
卸して、衣紋まで直して、それから横になって見たり、起返って見たり。 とかくして....
「明日」より 著者:井上紅梅
なく長く、行けば行くほど重味を感じ、しようことなしに、とある門前の石段の上に腰を
卸すと、身内からにじみ出た汗のために著物が冷りと肌に触った。一休みして寶兒が睡り....
「薬」より 著者:井上紅梅
だんだん増して来た。老人も子供も墳の間に出没した。 華大媽は何か知らん、重荷を
卸したようになって歩き出そうとした。そうして老女に勧めて 「わたしどもはもう帰り....
「孔乙己」より 著者:井上紅梅
中秋節の二三日前だったろうと思う。番頭さんはぶらりぶらりと帳〆めに掛り、黒板を取
卸して、たちまち大声を出した。 「孔乙己はしばらく出て来ないが、まだ十九銭残って....
「端午節」より 著者:井上紅梅
行が閉まったから、三日休んで八日の午後まで待たなければならない」 彼は席に腰を
卸し地面を見詰めながら一口お茶をのんでようやく口をひらいた。 「いい按排に役所の....
「白光」より 著者:井上紅梅
前に浮び上った。部屋中に浮び上って黒い輪に挟まれながら跳り出した。彼は椅子に腰を
卸してよく見ると、彼等は夜学に来ているのだが、彼の顔色を窺うようにも見えた。 「....
「幸福な家庭」より 著者:井上紅梅
を跡に残して子供を部屋に抱き入れ、頭を撫でて「好い子だ好い子だ」といいながら下へ
卸し、椅子を引寄せて子供を両膝の間に置いて坐し、手を上げて言った。「泣くでないぞ....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
へ来ると、浪打際までも行かないで、太く草臥れた状で、ぐッたりと先ず足を投げて腰を
卸す。どれ、貴女のために(ことづけ)の行方を見届けましょう。連獅子のあとを追って....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
谷駒平氏、ここに十三年前より商店を開き、その名をミカドストアと称し、目下小売店、
卸店両戸を有し、日本の製産を販売して大いに成功せりというを聞き、氏を訪問したり。....
「罪人」より 著者:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ
チの目を射たのは、何よりもこの黒い椅子であった。 さて一列の三つ目の椅子に腰を
卸して、フレンチは一間の内を見廻した。その時また顫えが来そうになったので、フレン....