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取残し
「取残し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
取残しの前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「行人」より 著者:夏目漱石
としての僕は君から離れるだけだ」
兄さんはこう断言しました。そうして私をそこへ
取残したまま、一人でどんどん山道を馳《か》け下りて行きました。その時私も兄さんの....
「法窓夜話」より 著者:穂積陳重
ばかりになっていたものであるが、辞職の際の事務整理に、故《ことさ》らにこれのみを
取残し、詳細なる意見書を添えて佐渡守に引継ぎ、佐渡守はただ板倉の意見をそっくりそ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
の里でうじゃついている間に、がんりきの百と出来合って、百の野郎が自慢面に、高山へ
取残して置いた三百両ほどのお蘭どののお手許金を、三日の間に持って帰ってやると喜ば....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
では入れないことになっています。 「おい、道庵がやって来たぞ、万字楼に病人を一人
取残しておいたから、先生、ぜひひとつ行って助けて来ておくんなさいと頼まれたから、....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
りを願います。残らず始末を致して参りましたはずでございますが、もしや、一品二品、
取残しがございましても、あんな際の時でございますから、ごかんべんが願いたいので…....
「潮風」より 著者:豊島与志雄
になることを主張した。芳枝さんは二階に上っていった。裏口のそばに、雑作改造の時に
取残してある三畳の室があった。佐代子はそこに寝るのだった。板前の高橋とその姪の美....
「秘密の庭」より 著者:チェスタートンギルバート・キース
った。ガロエイ卿を苦々しいような、または茫漠としたような、一種不思議な気分の中に
取残して、劇場の場景のような銀青色の庭は何だか彼を嘲ってるように思われた。オブリ....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
う中にも、掻巻の袖には枕が包まれ、布団の綴糸に、待人の紙綟が結ばっていそうだし、
取残した簾の目から鬢櫛が落ちて来そうで、どうやら翠の帳、紅の閨を、無断で通り抜け....
「草紅葉」より 著者:永井荷風
に死んだ。初め女房や娘と共に大通りへ逃げたが家の焼けるまでにはまだ間があろうと、
取残した荷物を一ツなりとも多く持出そうと立戻ったなり返って来なかったという。 ....
「審判」より 著者:カフカフランツ
っとそれを待ちもうけてでもいたかのように気を入れてうなずき、ただKが帽子を部屋に
取残して手にしていないのに気づくと、彼らは皆相次いで取りに走っていったが、その様....
「野草雑記・野鳥雑記」より 著者:柳田国男
ではなく、単に偶然にその声の囮に適することが発見せられて、多数の中から稀に一つ、
取残して珍重せられたというに過ぎぬ。専門の鑑定家の話を聴いて見ると、声の佳いとい....