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「吉野紙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

吉野紙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
れば、こんなに話がゆきつまるのではない。お互に心持は奥底まで解っているのだから、吉野紙を突破るほどにも力がありさえすれば、話の一歩を進めてお互に明放してしまうこ....
安井夫人」より 著者:森鴎外
、内裏様《だいりさま》やら五人囃《ごにんばや》しやら、一つびとつ取り出して、綿や吉野紙を除《の》けて置き並べていると、妹のお佐代さんがちょいちょい手を出す。「い....
虞美人草」より 著者:夏目漱石
大《おおき》さに描いた。茎を弾《はじ》けば、ひらひらと落つるばかりに軽く描いた。吉野紙を縮まして幾重の襞《ひだ》を、絞《しぼ》りに畳み込んだように描いた。色は赤....
吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
平生大事に畳《たた》んであるが、引き掻き方が烈《はげ》しいと、ぱっと乱れて中から吉野紙のような薄色の下着があらわれる。君は夏でも御苦労千万に二枚重ねで乙《おつ》....
雛がたり」より 著者:泉鏡花
毛氈。ここで桐の箱も可懐しそうに抱しめるように持って出て、指蓋を、すっと引くと、吉野紙の霞の中に、お雛様とお雛様が、紅梅白梅の面影に、ほんのりと出て、口許に莞爾....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
五月二十七日) 憎むと枯れる 戸を開けると、露一白。芝生には吉野紙を広げた様な蜘網が張って居る。小さな露の玉を瓔珞と貫いた蜘の糸が、枝から枝....
雪之丞変化」より 著者:三上於菟吉
一七 雪之丞は、いわれるままに、印籠の中子をあけて見た。するとそこには、吉野紙で、丁寧《ていねい》に包んだ丸薬がはいっている。 茶褐色《ちゃかっしょく....
からすうりの花と蛾」より 著者:寺田寅彦
からすうりの花は「花の骸骨」とでもいった感じのするものである。遠くから見ると吉野紙のようでもありまた一抹の煙のようでもある。手に取って見ると、白く柔らかく、....
紅玉」より 著者:泉鏡花
ほど、美しい眺望はない。分けて今度の花は、お一どのが蒔いた紅い玉から咲いたもの、吉野紙の霞で包んで、露をかためた硝子の器の中へ密と蔵ってもおこうものを。人間の黒....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
上げて、ずずん、かたりと開ける、袖を絞って蔽い果さず、燈は颯と夜風に消えた。が、吉野紙を蔽えるごとき、薄曇りの月の影を、隈ある暗き葎の中、底を分け出でて、打傾い....
異郷」より 著者:寺田寅彦
うな気がした。美しい花の雲を見ていると眩暈がして軽い吐気をさえ催した。どんよりと吉野紙に包まれたような空の光も、浜辺のような白い砂地のかがやきも、見るもののすべ....
障子の落書」より 著者:寺田寅彦
をつげたと云うだけの単純な満足が心の底に動いているので、過去の憂苦も行末の心配も吉野紙を距てた絵ぐらいに思われて、ただ何となく寛ろいだ心持になっている。 すぐ....
烏瓜の花と蛾」より 著者:寺田寅彦
ある。 烏瓜の花は「花の骸骨」とでも云った感じのするものである。遠くから見ると吉野紙のようでもありまた一抹の煙のようでもある。手に取って見ると、白く柔らかく、....
安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
土地では今までのところお目にかかることができなかったのです。枕カバーの上にさらに吉野紙(ナラン)が当ててありましたわい。 ★ 吉野の宿で、....
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)」より 著者:三遊亭円朝
女「いえ、これは貸しません、私のは大切な新駒屋のだから中々貸されません、似顔へ吉野紙を当てゝしまって置くのですから」 男「そんな事を云わないで貸しておくれよ、....