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「名残〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

名残の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:芥川竜之介
嗟《とっさ》に眼を挙げた。ひっそりした真昼の空気の中には、まだ蜂《はち》の翅音の名残《なご》りが、かすかな波動を残していた。 雌蜘蛛はいつか音もなく、薔薇の花....
路上」より 著者:芥川竜之介
《は》い纏《まつわ》っていた。彼にはその頭の中の幻が、最前電車の中で味った幸福の名残りのごとく見えた。と同時にまた来るべき、さらに大きな幸福の前触れのごとくも見....
俊寛」より 著者:芥川竜之介
日、この島の火山へ登りました。それから一月ほど御側《おそば》にいた後《のち》、御名残り惜しい思いをしながら、もう一度都へ帰って来ました。「見せばやなわれを思わむ....
小さき者へ」より 著者:有島武郎
のは。忘れる事の出来ないいくつかの顔は、暗い停車場のプラットフォームから私たちに名残《なご》りを惜しんだ。陰鬱な津軽海峡の海の色も後ろになった。東京まで付いて来....
溺れかけた兄妹」より 著者:有島武郎
砂浜の何所にも人っ子一人いませんでした。 私《わたし》の友達のMと私と妹とはお名残だといって海水浴にゆくことにしました。お婆様《ばあさま》が波が荒くなって来る....
婦系図」より 著者:泉鏡花
。」 お妙はそれまで気がつかなかった。呼れて、手を留て主税を見たが、水を汲んだ名残か、顔の色がほんのりと、物いわぬ目は、露や、玉や、およそ声なく言なき世のそれ....
クララの出家」より 著者:有島武郎
の礼拝に聖ルフィノ寺院に出かけて行った。在家の生活の最後の日だと思うと、さすがに名残が惜しまれて、彼女は心を凝らして化粧をした。「クララの光りの髪」とアッシジで....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
連れ出さるる時、夫人の姿は後ざまに反って、肩へ顔をつけて、振返ってあとを見たが、名残惜しそうであわれであった。 時しも一面の薄霞に、処々|艶あるよう、月の影に....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
と姿を消し、それと入れ代りに母の指導役のお爺さんが早速姿を現わしましたので、母は名残惜しげに、それでも大して泪も見せず、間もなく別れを告げて帰り行きました。 『....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
、一歩一歩に向上の進路を切り開くものもある。時とすれば又単なる愛情、又は現世愛の名残で引きつけられる場合もある。総じて、特殊の使命を有する場合の外は、指導すべき....
寺内の奇人団」より 著者:淡島寒月
水族館の近所にある植込を見ると茶の木が一、二本眼につくでしょう。あれは昔の名残で、明治の初年には、あの辺一帯茶畠で、今活動写真のある六区は田でした。これが....
ファラデーの伝」より 著者:愛知敬一
月二十五日死す 日輪が静に地平線より落ち行きて、始めて人の心に沈み行く日の光の名残が惜しまれる。せめて後の世に何なりと記念の物を残そうということが心に浮ぶ。 ....
活人形」より 著者:泉鏡花
三日月|形の古創あり。こは去年の春有名なる大捕物をせし折、鋭き小刀にて傷けられし名残なり。探偵の身にしては、賞牌ともいいつべき名誉の創痕なれど、衆に知らるる目標....
大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
したりし日も暮れぬ。 薄暗き小ランプを友として、夕飯を喫す。西天を彩れる夕映の名残も、全く消え果て、星の光は有りとは言へ、水面は、空闊にして、暗色四面を鎖し、....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
運んで行く。峠を下る頃、全く紅葉し尽した大嶺の南面一帯が、今、沈もうとする秋日の名残を受けて眩しく照り輝いている。日筋が蒼天に流れわたって、ふり仰ぐ真上にあかあ....