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咀嚼
「咀嚼〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
咀嚼の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「路上」より 著者:芥川竜之介
まま、さっきからちゃんと開いてあった。が、今の彼には、その頁に詰まっている思想を
咀嚼《そしゃく》するだけの根気がなかった。彼の頭の中には辰子の姿が、煙草の煙のも....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
に困るのはかの無学者――他日充分の準備教育を施した暁には、われ等の唱道する所を、
咀嚼翫味するに至るであろうが、当分まだわれ等の仕事とは没交渉である。 更にわれ....
「阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
見た事もない恐ろしい眼付を更に発見した。鈍くもあるが鋭くもあった。すでに彼の話を
咀嚼したのみならず、彼の皮肉以上の代物を噛みしめて、附かず離れずとこしえに彼の跡....
「明治哲学界の回顧」より 著者:井上哲次郎
的精神すなわちかんながらの道を疎外すべきではなかろうと思う。ところが東洋の哲学を
咀嚼《そしゃく》しないで単に西洋の哲学の受け売りをして、翻訳的、紹介的に煩瑣なる....
「かの女の朝」より 著者:岡本かの子
、領土を広く持っている気がするのである。自分の妄想までを傍で逸作の機敏な部分が、
咀嚼していて呉れる。
咀嚼して消化れたそれは、逸作の心か体か知らないが、兎に角逸作....
「食魔」より 著者:岡本かの子
れに煩わされず、逃れて一人うとうとする束の間を楽しいものに思い做した。腹に満ちた
咀嚼物は陽のあたためを受けて滋味は油のように溶け骨、肉を潤し剰り今や身体の全面に....
「鮨」より 著者:岡本かの子
く湿っていない煎餅なら大概好い音がした。子供は噛み取った煎餅の破片をじゅうぶんに
咀嚼して咽喉へきれいに嚥み下してから次の端を噛み取ることにかかる。上歯と下歯をま....
「富士」より 著者:岡本かの子
えている間に、家の人間に土より生い立てる本能の慾望を欠き、夢以外に食慾が持てない
咀嚼力の精神になってしまったのも原因の一つであろう。この女も人情のことは何でも判....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
みたことがあった。ねえ熊城君、中世非文献的史詩と殺人事件との関係を、ここで充分|
咀嚼してもらいたいと思うのだよ」
「フン、まだあるのか」と熊城は、唾で濡れた莨と....
「中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
たのも決して遅いことではない。けれども異国語の難関をのり越え、爛熟した生活感情を
咀嚼してまで、老大国の文学を机辺の風雅とすることは、あまりに稚い民族には、いまだ....
「エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
る物は味わい読まるべきであり、他の物は呑みこまるべきであり、そして少数のある物は
咀嚼し、かつ消化されなければならぬ」と彼は書いているが、彼自身の著作がこのなかの....
「日本上古の硬外交」より 著者:国枝史郎
正し、暦日を採用し、四天王寺、法隆寺等の世界的優秀の寺院をも建立し、儒教の思想を
咀嚼し仏教の教理を摂取し、しかも日本古来よりの神道をその上に位せしめ三位一体的に....
「春水と三馬」より 著者:桑木厳翼
で、頗る読み難いことは普通の草双紙の通りであるが、然し絵といい文章といい、よくも
咀嚼して日本流或は寧ろ戯作本流にしたものだと思う。文禄時代の羅馬字訳を初とし慶長....
「接吻」より 著者:神西清
クの周りに陣どって夜食をしていた。メルズリャコーフは悠然と口へ運んで、ゆっくりと
咀嚼しながら、膝の上にひろげた『ヨーロッパ通報』を読んでいた。ロブィトコはのべつ....
「科学上における権威の価値と弊害」より 著者:寺田寅彦
の観察力や考察力を麻痺させる弊は免れ難い。何でも鵜呑みにしては消化されない、歯の
咀嚼能力は退化し、食ったものは栄養にならない。しかるに如何なる案内者といえども絶....