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「咽ぶ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

咽ぶの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
振動魔」より 著者:海野十三
人が急に顔を近付けると、彼女のふくよかな乳房と真赤な襦袢との狭い隙間から、ムッと咽ぶような官能的な香気が、たち昇ってくるのだった。 柿丘秋郎が、こんな妖花に係....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
夫姦婦めが何が可哀そうだ! 気の毒なはこの俺よ! あったら武士も廃れてしまった」咽ぶがような声である。 「あなたもお可哀そうでございますよ」 「憐れんで貰う必要....
天主閣の音」より 著者:国枝史郎
れじゃあ夫れで可いじゃあないか」 「ふうん」と香具師は腕を組んだ。 お半の方は咽ぶように云った。 「恨みは恨み、恋は恋、妾に執ってはお殿様は、離れられないお方....
忘れえぬ人々」より 著者:国木田独歩
漢子であった。その顔の色、その目の光はちょうど悲しげな琵琶の音にふさわしく、あの咽ぶような糸の音につれて謡う声が沈んで濁って淀んでいた。巷の人は一人もこの僧を顧....
八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
眼をカッと開け、紋兵衛は葉之助を睨んだものである。 その時、遥か戸外に当たって咽ぶがような泣くがような哀々たる声が聞こえて来た。それは大勢の声であり、あたかも....
小春」より 著者:国木田独歩
のごとくである。 五年は経過せり。しかしてわれ今再びこの河畔に立ってその泉流の咽ぶを聴き、その危厳のそびゆるを仰ぎ、その蒼天の地に垂れて静かなるを観るなり。日....
日置流系図」より 著者:国枝史郎
たまま店先までスーと寄って来たが余韻のない嗄れた低い声で、 「弓弦を一筋……」と咽ぶように云った。 「へーい」 と忠蔵は応じたが何がなしに総身ゾッとして、木箱....
鵞湖仙人」より 著者:国枝史郎
ラと左右に揺れた。そっくり其の儘人魂である。 すると窓から覗いていた、若い女が咽ぶように叫んだ。 「おお幽霊船! 幽霊船!」 五 「幽霊船だって? ....
大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
隙もなかった。 ヒューッとはいる下座の笛、ドンドンと打ち込む太鼓つづみ、嫋々と咽ぶ三弦の音、まず音楽で魅せられる。 真っ先に開いたは「鏡山」で、敵役岩藤の憎....
大捕物仙人壺」より 著者:国枝史郎
らしい小銃の音が響いてきたが、その他には犬の声さえしない。 その静寂を貫いて、咽ぶがような、清元の音色が、一脈綿々と流れてきた。 刺客の一人は立ち止まり、じ....
柳営秘録かつえ蔵」より 著者:国枝史郎
刀を拭い、ゆるくサラサラと鞘へ納めた。 「可い気持だ」と呟いた。 「お杉様!」と咽ぶように云った。 それから後へ引っ返した。 6 江戸へ「夫婦斬り」の始まっ....
仇討姉妹笠」より 著者:国枝史郎
ずのお方!」 椿の花のような唇が開いて、雌蕊のような前歯が現われたかと思うと、咽ぶような訴えるような、あやめの声がそう云った。 「松浦|頼母の屋敷を遁れ、ここ....
銀三十枚」より 著者:国枝史郎
悪い思い付きではない」 梢から露が落ちて来た。楊の花が散って来た。イエスの祈る咽ぶような声が、いつ迄もいつ迄も聞こえていた。 やがてイエスは立ち上り、使徒達....
名人地獄」より 著者:国枝史郎
れば阪本駅路、五里六町の里程であった。 西は追分、東は関所 関所越えれば、旅の空咽ぶがような歌声が、月の光を水と見て、水の底から哀々と空に向かって澄み通る。甚三....
書記官」より 著者:川上眉山
に起りぬ。新たに来たる離座敷の客は耳を傾けつ。 糸につれて唄い出す声は、岩間に咽ぶ水を抑えて、巧みに流す生田の一節、客はまたさらに心を動かしてか、煙草をよそに....