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「哀愁〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

哀愁の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
大川の水」より 著者:芥川竜之介
おぼつかない汽笛の音と、石炭船の鳶色《とびいろ》の三角帆と、――すべてやみがたい哀愁をよび起すこれらの川のながめは、いかに自分の幼い心を、その岸に立つ楊柳《よう....
或る女」より 著者:有島武郎
、葉子は傘《かさ》を杖《つえ》にしながら思いにふけって歩いて行った。 こもった哀愁が、発しない酒のように、葉子のこめかみをちかちかと痛めた。葉子は人力車の行く....
或る女」より 著者:有島武郎
……誤解されたままで、女王は今死んで行く……そう思うとさすがに一抹《いちまつ》の哀愁がしみじみと胸をこそいで通った。葉子は涙を感じた。しかし涙は流れて出ないで、....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
の往来の人の足を停めさせるほど華やかにきこえた。 併しこの歓楽のさざめきは忽ち哀愁の涙に変った。角太郎の勘平が腹を切ると生々《なまなま》しい血潮が彼の衣裳を真....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
洟をすすっているような老人であるのも、そこに移り行く世のすがたが思われて、一種の哀愁を誘い出さぬでもない。 その飴売りのまだ相当に繁昌している明治時代の三月の....
金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
少年期の性の不如意が一度に吸い散らされた感じがした。代って舌鼓うちたいほどの甘い哀愁が復一の胸を充した。復一はそれ以上の意志もないのに大人の真似をして、 「ちっ....
食魔」より 著者:岡本かの子
は同時にうたた寝の夢の中にも通い、濡れ色の白鳥となって翼に乗せて過ぎる。はつ夏の哀愁。「与四郎さん、こんなとこで寝てなはる。用事あるんやわ、もう起きていなあ、」....
河明り」より 著者:岡本かの子
通い ささやきは胸に通い―――― 壁虎が鳴く、夜鳥が啼く。私にも何となく甘苦い哀愁が抽き出されて、ふとそれがいつか知らぬ間に海の上を渡っている若い店員にふらふ....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
きどきに落ちて来て、その光を奪いながら共に消えてゆく。子供心にも云い知れない淡い哀愁を誘い出されるのは、こういう秋の宵であった。(大正14・5「週刊朝日」) 雷....
」より 著者:池谷信三郎
ろうと、けっして汚されはしない、たった一つの想い出が、暗い霧の中に遠ざかって行く哀愁であった。 心を唱う最後の歌を、せめて、自分を知らない誰かに聞いてもらいた....
兄妹」より 著者:岡本かの子
の家の近くに武蔵野を一劃する大河が流れていた。日は落ち果てて対岸の燈が薄暮の甘い哀愁を含んでまばらにまたたいている。 ――君。ちょっと休んで行こうよ。 兄は道....
二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
排斥して、何といっても隅田河原の霞を罩めた春の夕暮というような日本民族独特の淡い哀愁を誘って日本の民衆の腸に染込ませるものは常磐津か新内の外にはないと反対した。....
一ノ倉沢正面の登攀」より 著者:小川登喜男
き収めつつ、じっと沈んで行く夕日を見つめていると、激しい疲れと同時に何かしら淡い哀愁を覚える。 夜の帳は迫っている。短い休息をとると、山の脊に付けられた歩きに....
渋温泉の秋」より 著者:小川未明
間の村でこういう景色を見ることは、さながら印象主義の画を見るような、明るいうちに哀愁が感じられた。 夕暮方、温泉場の町を歩いていると、夫婦連の西洋人を見た。男....
銀河の下の町」より 著者:小川未明
今日は、東へ、明日は、南へと、いうふうでありました。信吉はそれを見ると、一|種の哀愁を感ずるとともに、「もっとにぎやかな町があるのだろう。いってみたいものだな。....