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「嘗める〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

嘗めるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
俊寛」より 著者:菊池寛
供ができるということは普通人の想像も及ばない喜びだった。俊寛は、身重くなった妻を嘗めるように、いたわるのであった。翌年の春に、妻は玉のような男の子を産んだ。子供....
妖術」より 著者:泉鏡花
く、ぐったりと解ける腕組みを仕直し仕直し、がっくりと仰向いて、唇をペろぺろと舌で嘗める親仁も、蹲んだり立ったりして、色気のない大欠伸を、ああとする茜の新姐も、ま....
鍵から抜け出した女」より 著者:海野十三
団があるかと思うと、また横丁から大きな竜の作りものを多勢で担ぎ出してきて、道路を嘗めるように踊ってゆくのだった。 ラランラ、ララ……。 シャットシャット、ヨ....
小説家たらんとする青年に与う」より 著者:菊池寛
苦労を知ることは出来ないかも知れないが、とにかく、若い人は、つぶさに人生の辛酸を嘗めることが大切である。 作品の背後に、生活というものの苦労があるとないとでは....
断層顔」より 著者:海野十三
ていた。煙草をすっかりやめた彼にも、仕事の必要からして代用煙草のつまったパイプを嘗めることもある。彼はゆっくりした歩調で、怪漢の前に近づいた。そして遂に足を停め....
かんかん虫」より 著者:有島武郎
向いて見ると彼は正面を向いて居た。波の反射が陽炎の様にてらてらと顔から半白の頭を嘗めるので、うるさ相に眼をかすめながら、向うの白く光った人造石の石垣に囲まれたセ....
崩れる鬼影」より 著者:海野十三
段があります。何か組打をしているらしい騒々しい物音が、その上でします。私は階段を嘗めるようにして駈けのぼりました。 「兄さーん」 二階の廊下を走りながら叫びま....
売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
黒塀の忍び返の下に、溝から這上った蛆の、醜い汚い筋をぶるぶると震わせながら、麸を嘗めるような形が、歴然と、自分が瞳に映った時、宗吉はもはや蒼白になった。 ここ....
鷭狩」より 著者:泉鏡花
新しく、隙間とてもないのに、薄い霧のようなものが、すっと這入っては、そッと爪尖を嘗めるので、変にスリッパが辷りそうで、足許が覚束ない。 渠は壁に掴った。 掌....
半島一奇抄」より 著者:泉鏡花
掴んで煙を掻分けるように、火事じゃ、と駆つけた居士が、(やあ、お谷、軒をそれ火が嘗めるわ、ええ何をしとる)と太鼓ぬけに上って、二階へ出て、縁に倒れたのを、――そ....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
糠雨が降って来たもの。その天窓から顔へかかるのが、塵塚から何か出て、冷い舌の先で嘗めるようです。 水の音は次第々々に、あるいは嘲り、あるいは罵り、中にゃ独言を....
夜光虫」より 著者:織田作之助
んか。え、へ、へ、……」 と、亀吉は奇妙な笑いを笑って、 「――ほんまだっか」嘗めるような視線で、小沢の眼を嘗め廻した。 小沢はふと不安になったが、 「だい....
夜の構図」より 著者:織田作之助
であった。 すらりと背も高く、女に対する言葉づかいも、ぶっ切ら棒な調子の中に、嘗めるような丁寧さがあった。いわば女好きのする男なのだ。美男子ではないが、渋いよ....
葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
ぎ寄せたのは弁天橋であった、船頭は舳へ乗かえ、棹を引いて横づけにする、水は船底を嘗めるようにさらさらと引いて石垣へだぶり。 「当りますよ。」 「活きてるか、これ....
仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
る苦の世界、これが地獄であります。その反対なのが極楽であります。 現代の人々が嘗める地獄苦で、昔の人と同じものもありましょうが、また昔の人の知らなかった新しい....