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「噛む〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

噛むの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
仙人」より 著者:芥川竜之介
しくは返事もしない。「成程な」とか「さようさ」とか云う度に、歯のない口が、空気を噛むような、運動をする。根の所で、きたない黄いろになっている髯も、それにつれて上....
妖婆」より 著者:芥川竜之介
さえ出来ませんでしたが、それでも夜が明けると、幾分か心に張りが出ましたので、砂を噛むより味のない朝飯をすませると、早速泰さんへ電話をかけました。「莫迦《ばか》に....
雛がたり」より 著者:泉鏡花
微妙なる音楽であった。仲よしの小鳥が嘴を接す時、歯の生際の嬰児が、軽焼をカリリと噛む時、耳を澄すと、ふとこんな音がするかと思う、――話は違うが、(ろうたけたるも....
婦系図」より 著者:泉鏡花
のまま引開けると、裏階子が大な穴のように真黒なばかりで、別に何にも無い。 瓦を噛むように棟近く、夜鴉が、かあ、と鳴いた。 鳴きながら、伝うて飛ぶのを、※とし....
海異記」より 著者:泉鏡花
一番、爺様と相談すべいか、だって、お銭にゃならねえとよ。」 と奴は悄乎げて指を噛む。 「いいえさ、今が今というんじゃないんだよ。突然そんな事をいっちゃ不可いよ....
伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
ざッと鳴った。 女優の船頭は棹を落した。 あれあれ、その波頭がたちまち船底を噛むかとすれば、傾く船に三人が声を殺した。途端に二三尺あとへ引いて、薄波を一|煽....
半島一奇抄」より 著者:泉鏡花
…ところが、最初の山寺でもそうだったと申しますが、鼠が女像の足を狙う。……朝顔を噛むようだ。……唯今でも皆がそう言うのでございますがな、これが変です。足を狙うの....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
る。眉が薄く、鼻がひしゃげて、ソレその唇の厚い事、おまけに頬骨がギシと出て、歯を噛むとガチガチと鳴りそう。左の一眼べとりと盲い、右が白眼で、ぐるりと飜った、しか....
革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
、絵看板を畳込んで持っていて、汽車が隧道へ入った、真暗な煙の裡で、颯と化猫が女を噛む血だらけな緋の袴の、真赤な色を投出しそうに考えられた。 で、どこまで一所に....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
広い谷に、はらはらとある灯をたよりに、ものの十|間とは進まないで、口を開けて足を噛む狼のような巌の径に行悩んだ。 「どうです、いっそここへ蹲んで、壜詰の口を開け....
南地心中」より 著者:泉鏡花
は、銀の曇ったような打紐と見えた。 その尖は水に潜って、亀の子は、ばくりと紐を噛む、ト袖口を軽く袂を絞った、小腕白く雪を伸べた。が、重量がかかるか、引く手に幽....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
した、……まあ、お恥かしい。」 といいかけて差俯向く、額に乱れた前髪は、歯にも噛むべく怨めしそう。 「ですが、ですが、それは心の迷いです。昨日あたりからどうか....
多神教」より 著者:泉鏡花
いか、一枚も欠けない歯が皆|弛んで、噛切るやくに立ちません。舌も縮んで唇を、唇を噛むばかり。(その唇より血を流す。) 神職 いよいよ悪鬼の形相じゃ。陽を以って陰....
瓜の涙」より 著者:泉鏡花
こで、蛤が貝を開いて、 「善光寺様、お開帳。」とこう言うのである。 鉈豆煙管を噛むように啣えながら、枝を透かして仰ぐと、雲の搦んだ暗い梢は、ちらちらと、今も紫....
式部小路」より 著者:泉鏡花
破竹か、孟宗か、寒竹か、あたまから火をつけて蒸焼にして噛ると、ちと乱だ。楊枝でも噛むことか、割箸を横啣えとやりゃあがって、喰い裂いちゃ吐出しまさ。 大概のこと....