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地虫
「地虫〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
地虫の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「嵐」より 著者:島崎藤村
の声がそこにも起こった。どこの石垣のすみで鳴くとも知れないような、ほそぼそとした
地虫の声も耳にはいる。私は庭に向いた四畳半の縁先へ鋏を持ち出して、よく延びやすい....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
あいだに、チチチと、耳鳴りのような音《ね》をたてて鳴いているのは、あれは、なんの
地虫? 左膳は萩乃を引っかかえて、そのあき地へ切れこんだ。小暗い隅へ走りこむと....
「新版 放浪記」より 著者:林芙美子
セルロイドの匂いに、セルロイドの生活だ。朝も晩も、ベタベタ三原色を塗りたくって、
地虫のように、太陽から隔離された歪《ゆが》んだ工場の中で、コツコツ無限に長い時間....
「女流作家として私は何を求むるか」より 著者:宮本百合子
真理を究める求道」であるという心境、それを私は求めたいと思います。私の目下はあの
地虫が春が来てひとりでに殼を破って地上に抜け出る、あの漸進的な自然の外脱を得たい....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
体を顕せろ! とトロンコの据眼で、提灯を下目に睨む、とぐたりとなった、並木の下。
地虫のような鼾を立てつつ、大崩壊に差懸ると、海が変って、太平洋を煽る風に、提灯の....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
ふとん》やその他のものを積ませた。 だが、鉄さん自身が浅間《あさま》しい姿で、
地虫のように台所口につくばった時、祖母は決してゆるさなかった。同情の安売りはしな....
「秋の反射」より 著者:宮本百合子
い」 「仙二さんが、荷車に乗せてってくれますってよ」 ……もう土間の隅では微に
地虫が鳴いている。秋の日を眺めながら、荷車に乗ってゆくという沢や婆と坐っていると....
「放浪記(初出)」より 著者:林芙美子
ルロイドの匂い、セルロイドの生活だ。 朝も晩も、ベタベタ三原色を塗りたくって、
地虫のように、太陽から隔離されて、歪んだ工場の中で、コツコツ無限に長い時間を青春....
「魔都」より 著者:久生十蘭
になってしまった。
部屋のどこかで微かにブザーが鳴る。聞きようによればどこかで
地虫が鳴いているような、そんな仄かな音である。真名古は悒然たる面持で立ち上ると、....
「顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
郎とひょろ松。まるで、蝙蝠が翼でもひろげたように、たがいに袖で口をおおいながら、
地虫の鳴くように低い声でボソボソとささやきあっている。 「ねえ、阿古十郎さん、詮....
「あなたも私も」より 著者:久生十蘭
れない。 「ヤッホー」 頭だけ入れて、奥のけはいをさぐる。 ラジオの歌声が、
地虫のうなりのようにひびいてくるだけで、ひとのいるきざしは、まったく感じられなか....
「日記」より 著者:宮本百合子
ないと感じる。理屈ではなく、私の本性のうちには、掘りさげ、掘り下げて行く、一つの
地虫のような熱烈な、必死なものがあるのだ。 それだのに、弱いことは、他の暗示や....
「円朝花火」より 著者:正岡容
負けるから、我慢していなさい』 『アア痛、……』」 打ち水をした庭で、ときどき
地虫の鳴くのをよそに、いよいよ圓朝は噺をすすめた。 「……『これこれ、按摩、待て....
「冬のちょう」より 著者:小川未明
あろうと、女ちょうは考えていました。 その晩の月は、明るかったのです。そして、
地虫は、さながら、春の夜を思わせるように哀れっぽい調子で、唄をうたっていました。....
「俳句の作りよう」より 著者:高浜虚子
村 ゝゝゝ毛虫引き行くゝゝゝゝ 迂作 ゝゝゝ死蝉を引くゝゝゝゝ 梅堂 ゝゝゝ
地虫曳き去るゝゝゝゝ 百合王 ゝゝゝ傷蝉あさるゝゝゝゝ 政女 ゝゝゝ菓子引く....