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夕暮れ
「夕暮れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夕暮れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
た。大八車《だいはちぐるま》が続けさまに田舎《いなか》に向いて帰って行く小石川の
夕暮れの中を、葉子は傘《かさ》を杖《つえ》にしながら思いにふけって歩いて行った。....
「或る女」より 著者:有島武郎
がずに桜の並み木の下などを徘徊《はいかい》して待っていた。さすがに十一月となると
夕暮れを催した空は見る見る薄寒くなって風さえ吹き出している。一日の行楽に遊び疲れ....
「卑怯者」より 著者:有島武郎
調子づいてだんだん高められて、果ては何処《どこ》からともなくそわそわと物音のする
夕暮れの町の空気が、この癇高《かんだか》な叫び声で埋められてしまうほどになった。....
「星座」より 著者:有島武郎
鐘に慣れたその耳にも、演武場の鐘の音は美しいものだった。
ことに冬、真昼間でも
夕暮れのように天地が暗らみわたって、吹きまく吹雪のほかには何の物音もしないような....
「籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
には炉を切って、新造や禿《かむろ》が庭釜の火を焚《た》いていた。その焚火の煙りが
夕暮れの寒い色を誘い出すように、籬を洩れて薄白く流れているのも、あわただしいよう....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
あるものはさびしい掛け声をなお海の上に響かせて、忙しく配縄を上げているのもある。
夕暮れに海上に点々と浮かんだ小船を見渡すのは悲しいものだ。そこには人間の生活がそ....
「茶の本」より 著者:岡倉覚三
ると主張した(二八)。 見渡せば花ももみじもなかりけり 浦のとまやの秋の
夕暮れ(二九) その他|小堀遠州のような人々はまた別の効果を求めた。遠州は庭径....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
ている人も見えた。 蟹や蜻蛉もたくさんにいた。蝙蝠の飛ぶのもしばしば見た。夏の
夕暮れには、子供が草鞋を提げて「蝙蝠来い」と呼びながら、蝙蝠を追い廻していたもの....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
に仰いで、沫を避けつつ、吻と息。 濡れた帽子を階段|擬宝珠に預けて、瀬多の橋に
夕暮れた一人旅という姿で、茫然としてしばらく彳む。…… 風が出て、雨は冷々とし....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
から楽しまず、さながら荒れ果てた墓地に根をおろしているサイプレスの木が、寥寂たる
夕暮れにその頂きを徒らに天へとどかせようとしているかのように、その後半生を陰鬱の....
「経帷子の秘密」より 著者:岡本綺堂
まして……。」 かれは浅黄色の小さい風呂敷包みを持っていた。この問答のうちに、
夕暮れの色はいよいよ迫って来たので、駕籠屋は途中で駕籠を立てて、提灯に蝋燭の灯を....
「虹と感興」より 著者:上村松園
そしてその床几と人物の背後には、夏萩があります。夏萩は白い花をいい頃合に着けて、
夕暮れ頃の雨上りの露を含んでおります。 左の片双には、娘が幼な児を抱いて立って....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
這い登ると、眼の上には高い甍が仰がれた。 「これは天主閣というのじゃ。」と、男は
夕暮れの空に聳えている高い建物を指さした。 それは古い寺に見る塔のようなもので....
「西航日録」より 著者:井上円了
することせわしなく、紳士も叔女も花のごとく色とりどりに会堂にみちる。日曜の朝から
夕暮れまで修養につとめ、それが国を富ませ兵を強くさせているのである。) とつづり....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
湾それぞれの風景をまたたく間に見送る。さらにデッキの高い所にのぼって一望すれば、
夕暮れの雲はたちまちに九州の山々をとじこめてしまった。) 夜暗くして波光りあり....