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奏でる
「奏でる〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
奏でるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
らなんだよ」
その時、この殺気に充ちた陰気な室の空気を揺ぶって、古風な経文歌を
奏でる、侘しい鐘鳴器の音が響いてきた。法水は先刻尖塔の中に錘舌鐘の所在には気がつ....
「ルバイヤート」より 著者:小川亮作
み敷く身と思え。 123 菫は衣を色にそめ、薔薇の袂に そよかぜが妙なる楽を
奏でるとき、 もし心ある人ならば、玉の乙女と酒をくみ、 その盃を破るだろうよ、石....
「最後の胡弓弾き」より 著者:新美南吉
か考えて見ても解らなかった。いかにも年々門附けはすたれて来ている。しかし木之助の
奏でる胡弓を、松次郎のたたく鼓を、その合奏を愛している人々が全部なくなったわけで....
「婦人と文学」より 著者:宮本百合子
実は、果して男の盲人の弾く琴と令嬢の稽古事として弾く琴とが、変りなき同様の曲節を
奏でることがあり得るだろうか。漱石は、自然主義に反対して芸術の世界を、生活的世界....
「思想としての文学」より 著者:戸坂潤
場合は象徴を生む。つまり之は、文学に於ける世界観と方法との両者の最も著しい音色を
奏でる鼓膜なのである。 そこで私に云わせれば、この壁に沿って影を写すものが、す....
「鏡心灯語 抄」より 著者:与謝野晶子
堂の片隅に身を狭めながら自分相応の小さな楽器を執って有名無名の多数の楽手が人生を
奏でる大管絃楽の複音律に微かな一音を添えようとするのが私の志である。 けれどそ....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
と、山から谷、穴の中の蟻までが耳を澄ます、微妙な天楽であるごとく、喨々として調べ
奏でる。 ……きょ、きょら、くらら、くららっ! と転がして、発奮みかかって、....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
者の姿が想像されて、境は少からず頼母しかった。峠には人が居る。 その実、山霊が
奏でるので、次第々々に雲の底へ、高く消えて行く類の、深秘な音楽ではあるまいか、と....
「球体派」より 著者:豊島与志雄
形は完成の姿である。寺院の円屋根には一種神秘な意義が宿されている。下手な音楽家の
奏でる音は、尖っていたり平べったかったりするが、上手な音楽家の指先が立てる音は、....
「アド・バルーン」より 著者:織田作之助
前まで来ると、もうそこからは夜店の外れでしょう、底が抜けたように薄暗く、演歌師の
奏でるバイオリンの響きは、夜店の果てまで来たもの哀しさでした。 しかし、私がも....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
、旗|幟や、玉|串などの立ち並ぶ下に、礼装した神官たちがいずまい正し、伶人が楽を
奏でるなかに、私の鈴子は美しい巫女の装いして、今宵は化粧も濃く匂うばかりに立ちま....
「フランケンシュタイン」より 著者:シェリーメアリー・ウォルストンクラフト
念を起させ、娘のやさしいものごしがわたしの愛情を誘った。老人が甘美な哀しみの曲を
奏でると、愛らしい娘の眼から涙が流れたのが見えたが、耳に聞えるような声を出して娘....
「二十歳のエチュード」より 著者:原口統三
粉雪の降る正月の晩、貧しい街々をめぐっては、子供たちの枕べに、やさしい初夢の唄を
奏でる、僕は恵み深い訪問者、気軽な独り身の辻音楽師であった。 その夕べ、地獄の....
「エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
というものは、いったいどんな種類のものだったであろう。居酒屋の美少年がリュウトに
奏でる聖なる舞曲にいま恍惚としているかと思うと、またたちまち荒イヌどもが一匹のク....
「三国志」より 著者:吉川英治
周瑜は、音楽に精しく、多感多情の風流子でもあった。だから宴楽の時などでも、楽人の
奏でる調節や譜に間違いがあると、どんなに酔っているときでも、きっと奏手の楽人をふ....