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「寂寥〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

寂寥の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
大川の水」より 著者:芥川竜之介
分は、昔からあの水を見るごとに、なんとなく、涙を落したいような、言いがたい慰安と寂寥《せきりょう》とを感じた。まったく、自分の住んでいる世界から遠ざかって、なつ....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
《やまばと》の声を送って来る事を忘れなかった。沢も芽ぐんだ蘆《あし》と共に、彼の寂寥《せきりょう》を慰むべく、仄《ほの》かに暖い春の雲を物静な水に映していた。藪....
生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
かけなかった熱い涙がほろほろとあふれ出た。じっとすわったままではいられないような寂寥の念がまっ暗に胸中に広がった。 君はそっと座を立った。そして弁当を元どおり....
」より 著者:池谷信三郎
たというのです。たとえシイカが、百人の恋人を港のように巡りつつ、愛する術を忘れた寂寥を忘れに、この人生の氷河の下を流れて行っても、私はいつまでもいつまでも、彼女....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
って笑うより、禁厭にでもするのか、と気味の悪そうな顔をしたのを、また嬉しがって、寂寥たる夜店のあたりを一廻り。横町を田畝へ抜けて――はじめから志した――山の森の....
吉原新話」より 著者:泉鏡花
角で直ぐに腕車をそう言ってね。 乗ってさ。出る、ともう、そこらで梟の声がする。寂寥とした森の下を、墓所に附いて、薄暮合いに蹴込が真赤で、晃々輪が高く廻った、と....
西航日録」より 著者:井上円了
の職工これに従事せるが、四、五日前より一大ストライキを起こし、一人の工夫を見ず、寂寥のありさまなり。余、寓舎に帰り、校長に語るにその実況をもってし、かつこのスト....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
留すと聞くも、目下みな真珠採集のために遠海にあり。市街の住民約二千人と称するも、寂寥たる小都邑なり。家屋はすべて木造、トタン屋根にして、二階を限りとす。気候は年....
迷信解」より 著者:井上円了
外部の事情とは、薄暮、夜中のごとき事物の判明せざるとき、または山間深林のごとき寂寥たる場所、または死人のありたる家もしくは墓場の間のごとき、幽霊に縁故ある場所....
仲々死なぬ彼奴」より 著者:海野十三
を、深く遺憾としなければならない。 その後に来るものは、無間地獄のような悲歎と寂寥とであった。喜助にはもう何事を望む気持もなかった。誰を待つことも考えられなか....
白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
忠は木の切株に上って見つめている。羚羊か猿だろうという。カラカラという音は四辺の寂寥を破って高くきこえる。羚羊の姿が見えるという、仔を連れているという、しかしこ....
高原の太陽」より 著者:岡本かの子
ようになった。 青年は親しみを増して来るにつれ、あらわに自分の生命の奥にひそむ寂寥をかの女に訴える言葉が多くなり、かの女はそれにあまり深くひき入れまいとする用....
渾沌未分」より 著者:岡本かの子
や素人の父の型の極った意匠など必要はなくなった。父の住居|附きのオフィスは年々|寂寥を増した。しばらく持ち堪えてはいたが、その後いろいろな事業に手を出した末が、....
食魔」より 著者:岡本かの子
家がこの店に集ったことは見易き道理である。この古都には若い人々の肺には重苦しくて寂寥だけの空気があった。これを撥ね除け攪き壊すには極端な反撥が要った。それ故、一....
巴里祭」より 著者:岡本かの子
もう夢のほか感情の歯の力を失ったものは彼のような男にすれ違っただけで自分の青白い寂寥が感じられた。 ジャネットはと見ると人混みに紛れ行く男の姿をいつまでも見送....