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嶮しい
「嶮しい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
嶮しいの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「親子」より 著者:有島武郎
うに離れ離れにわびしく立っていた。 農場の事務所に達するには、およそ一丁ほどの
嶮しい赤土の坂を登らなければならない。ちょうど七十二になる彼の父はそこにかかると....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
は自分の掌を見つめることにすら、熱い涙をさそわれるのではないか。 思えばそれは
嶮しい道でもある。私の主体とは私自身だと知るのは、私を極度に厳粛にする。他人に対....
「眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
い女で。……聞いてもうまそうだが、これは凄かったろう、その時、東京で想像しても、
嶮しいとも、高いとも、深いとも、峰谷の重なり合った木曾山中のしらしらあけです……....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
徳さんはもう四十を三つ四つ越えているらしかった。髪の毛の薄い、色の蒼黒い、眼の
嶮しい、頤の尖った、見るから神経質らしい男で、手足は職人に不似合いなくらいに繊細....
「薬草取」より 著者:泉鏡花
、花籃を揺直し、 「貴方、その樵夫の衆にお尋ねなすって可うございました。そんなに
嶮しい坂ではございませんが、些とも人が通いませんから、誠に知れにくいのでございま....
「夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
池を見に来たんだ。……明日にしては、と云うんだけれども、道は一里余り、が、上りが
嶮しい。この暑さでは夜が可い。しかし、四五日は帰さんから、明日の晩にしてくれない....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
、三度の食事にがつがつしていた処へ、朝飯前とたとえにも言うのが、突落されるように
嶮しい石段を下りたドン底の空腹さ。……天麩羅とも、蕎麦とも、焼芋とも、芬と塩煎餅....
「みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
て、蜿々と続いた松まじりの雑木山は、畠を隔てたばかり目の前に近いから、遠い山も、
嶮しい嶺も遮られる。ために景色が穏かで、空も優しい。真綿のように処々白い雲を刷い....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
、身繕いもせず、そのまま、見返りもしないで木戸を入った。 巌は鋭い。踏上る径は
嶮しい。が、お米の双の爪さきは、白い蝶々に、おじさんを載せて、高く導く。 「何だ....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
の声のきこえた方角を聞き誤まりそうにも思えないのであるが、彼は自分の頭のすぐ上の
嶮しい断崖の上に立っている私を見あげもせずに、あたりを見まわして更に線路の上を見....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
しましたが、どうしても顔には現われずにはいませんでした。セラピオン師は不安らしい
嶮しい眼をして私を見つめていましたが、また、こう言いました。 「わたしはあなたに....
「くろん坊」より 著者:岡本綺堂
るので、叔父は反対の方角にむかって、山越しに越前の国へ出ようと企てた。その途中の
嶮しいのはもちろん覚悟の上である。およそ十里ほども北へたどると、外山村に着く。そ....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
渇き切っている侍従は、あえぎながら采女のあとを追って行った。狭い路を横ぎって
嶮しい岸を降りて、采女が岩づたいに川のまん中の方へ渡ってゆく間に、侍従は彼から受....
「古事記」より 著者:太安万侶
たしの手をお取りになる。 また、 梯子《はしご》を立てたようなクラハシ山は
嶮しいけれど、 わが妻と登れば
嶮しいとも思いません。 それから逃げて、宇陀《....
「むかでの跫音」より 著者:大倉燁子
よ』 『ではお聞き下さい。何でもよほど山奥らしいのですが、疲れきった男女の六部が
嶮しい崖縁で休息んでいる処から始まるんです。頭上には老樹が枝をかわしていて薄暗く....