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「希薄〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

希薄の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
映画時代」より 著者:寺田寅彦
記憶の濃度のほうが、かの失敗した試みに伴のうた強烈なる法悦の記憶に比べてかえって希薄である。 その時の映画の種板はたいてい一枚一枚に長方形の桐製《きりせい》の....
旅日記から」より 著者:寺田寅彦
見たら上弦の月が赤く天心にかかって砂漠のながめは夢のようであった。船橋の探照燈は希薄な沈黙した靄の中に一道の銀のような光を投げて、船はきわめて静かに進んでいた。....
軽井沢」より 著者:寺田寅彦
い。そうだとするとねずみの食うものが少ないせいかも知れない。つまり定住した人口が希薄なせいかもしれない。冬になればこのへんはほとんど無人境になるそうであるから。....
とんびと油揚」より 著者:寺田寅彦
問題となることは、いかにして地上の腐肉から発散するガスを含んだ空気がはなはだしく希薄にされることなしに百メートルの上空に達しうるかということである。ところが、こ....
科学と文学」より 著者:寺田寅彦
あった。すなわち、「真田三代記」、「漢楚軍談」、「三国志」といったような人間味の希薄なものを読みふけったのであった。それから「西遊記」、「椿説弓張月」、「南総里....
浮世絵の曲線」より 著者:寺田寅彦
の顔の線などは無意味な線の断片の集合に堕落してしまって画面全体に対する存在理由の希薄なものになってしまいそうである。 頭髪の輪郭をなしているいろいろの曲線がま....
映画雑感(Ⅰ)」より 著者:寺田寅彦
り除かれない限り、将来日本でほんとうに世界的な映画の作られる見込みもまたはなはだ希薄であろうと思われるのである。この事情はいつまで持続するか。これは実に単に映画....
映画芸術」より 著者:寺田寅彦
載することのできない潜在意識的な情緒の陰影あるいは笹縁がついている。音の具象性が希薄であればあるほど、この陰影は濃厚になる。それだから、名状し難いいろいろな心持....
空想日録」より 著者:寺田寅彦
の少しの第二近似を行なうだけである。さて、このすえ付け作業がすむと今度は、両手を希薄な泥汁に浸したのちに、その手で回転する団塊の胴を両方から押えながら下から上へ....
映画雑感(Ⅳ)」より 著者:寺田寅彦
見て相当楽しめる映画であろうと思われる。しかしユダヤ人というものの概念のはなはだ希薄な日本人には、おそらくこの映画の本来のねらいどころは感ぜられないであろうし、....
天災と国防」より 著者:寺田寅彦
もっている。それで明治以前にはそういう危険のあるような場所には自然に人間の集落が希薄になっていたのではないかと想像される。古い民家の集落の分布は一見偶然のようで....
俳句の精神」より 著者:寺田寅彦
りうるのはいったいどういうわけであろうか。この句の表面にはあらわな主観はきわめて希薄である。「横とう」という言葉にわずかな主観のにおいを感ずるくらいである。それ....
我が人生観」より 著者:坂口安吾
、不満ではなかったと言えよう。彼女の魂は比類なく寛大で、何ものに対しても、悪意が希薄であった。私ひとりに対してなら、私は苦痛を感じ、その偏った愛情を憎んだであろ....
夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
提唱といっても、つまるところ形式的な評論倒れで、探求の精神も科学的合理性も意外に希薄であった。現実尊重ということも、洗いだててみれば、芸術主義の一変貌に外ならな....
青春の息の痕」より 著者:倉田百三
がですか。しかしあなたのまれな精力をもってしても二つの方面の仕事がそのいずれかを希薄にせずにはできないようだったら考えねばなりませんね。しかしシルレルやレッシン....