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「幻像〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

幻像の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
て来た。葉子の神経は磁石《じしゃく》に吸い寄せられた砂鉄のように、堅くこの一つの幻像の上に集注して、車内にあった時と同様な緊張した恐ろしい状態に返った。停車場に....
黒猫」より 著者:佐々木直次郎
それが私の想像に深い印象を与えたことに変りはなかった。幾月ものあいだ私はその猫の幻像を払いのけることができなかった。そしてそのあいだ、悔恨に似ているがそうではな....
白蟻」より 著者:小栗虫太郎
という始末ですから、どうせどっちつかずの循環論になってしまって、結局はその二人の幻像が、ああでもないこうでもないと、物狂わしげな叫び声を上げながら、私の頭の中を....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
照してみると、あるいは、死体|蝋燭の燭火をうけた乾板が、ダンネベルグ夫人に算哲の幻像を見せて、意識を奪ったのではないか。――と云うような幽玄きわまる暗示が、しだ....
聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
しかし、ハインリッヒ・ゾイゼ(十三世紀|独逸の有名な神学者)がしばしば見た耶蘇の幻像と云うのは、その源が親しく凝視めていた聖画にあったと云いますがね。それに、誰....
風流仏」より 著者:幸田露伴
生々として睛、何の情を含みてか吾与えし櫛にジッと見とれ居る美しさ、アヽ此処なりと幻像を写して再一鑿、漸く二十日を越えて最初の意匠誤らず、花漬売の時の襤褸をも著せ....
堕落論」より 著者:坂口安吾
とき、人為の卑小さ、人為によって保ち得た処女の純潔の卑小さなどは泡沫の如き虚しい幻像にすぎないことを見出さずにいられない。 特攻隊の勇士はただ幻影であるにすぎ....
安吾巷談」より 著者:坂口安吾
に戯画を描いてみせている。最後の結論に至って、諷刺の本領を発揮し、巧みに視覚的な幻像を与えている。しかしこれは文章に構成され、最後に視覚に訴えるまでの文章の綾が....
貞操問答」より 著者:菊池寛
は、普通の夜の暗さなどよりも、ずっと気持がわるかった。そこここの隅々から、奇怪な幻像でもがうごき出しそうな気味わるさを持っていた。 ある恐怖と圧迫を感じて、新....
映画雑感(Ⅵ)」より 著者:寺田寅彦
り、これによってこうした発声映画にのみ固有な特殊の効果を出している。眼前を過ぎる幻像を悲痛のために強直した顔の表情で見詰めながら、さながら鍵盤にのしかかるように....
人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
、たしかに里虹の子にはちがいないのであるが…… と、1、2、3、4――と数字の幻像が目まぐるしく駈け廻っているうちに、いかなる心理的な結合であろうか、いきなり....
地上」より 著者:島田清次郎
う。平一郎は自分の母のお光の瘠せた有様を回想して、かりにも「母だ」と思えた自分の幻像を不快にさえ思った。しかし、驚いたのは平一郎のみではなかったのだ。ああ、同じ....
」より 著者:岡本かの子
になればそれが病的に極端になるものかも知れない。最近殊に彼女の脳裡に一人の男性の幻像が生じたものらしい。でも、それは、誰という見当もない。漠然とした一人の男性に....
迷信解」より 著者:井上円了
かるものは、狸のあらざるに日夜狸の声色を現見するは、全く心の妄想がほかに現れて、幻像、妄境を組み立つるゆえである。かくのごときことは精神病者にありがちのことなれ....
エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
色を染めたガアゼ――そういう衣裳の下に女の形は消え失せて、人はそのかわりに一つの幻像を見る――壮大で、ものものしく、そして自己創造的な幻像を――後代の人はこのよ....