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「幽寂〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

幽寂の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
梓川の上流」より 著者:小島烏水
る、その下の渓谷は、父の家でない、原始の土である、綿々たる時代の人間の夢が住む、幽寂の谷である、何故かというに、善光寺街道、木曾街道、糸魚川街道などを、往《ゆ》....
武蔵野」より 著者:国木田独歩
《くりのき》もずいぶん多いから。 もしそれ時雨《しぐれ》の音に至ってはこれほど幽寂《ゆうじゃく》のものはない。山家の時雨は我国でも和歌の題にまでなっているが、....
義血侠血」より 著者:泉鏡花
して佇みぬ。その心には何を思うともなく、きょろきょろとあたりを※《みまわ》せり。幽寂に造られたる平庭を前に、縁の雨戸は長く続きて、家内は全く寝鎮《ねしず》まりた....
東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
、情愛の発露の道を知らない昔人はどうにも仕方なかったらしい。掃き浄めた朝の座敷で幽寂閑雅な気分に浸る。それが唯一の自分の心を開く道で、この機会に於てのみ娘に対し....
熊の出る開墾地」より 著者:佐左木俊郎
あわてて傘を翳《かざ》した。時雨は忍びやかに原始林の上を渡り過ぎて行った。自然の幽寂な音楽が遠退《とおの》くにつれて、深林の底は再び明るくなった。紺碧の高い空か....
恐怖城」より 著者:佐左木俊郎
中に蔦代をも引き入れた。原生樹林の底は急に薄暗くなってきた。時雨は闊葉樹林の上に幽寂な音楽を掻《か》き立てながら渡り過ぎていった。馬車は雨に濡れ、雨に叩き落とさ....
新生」より 著者:島崎藤村
書きつけたところも有った。子供と一緒に近くにある禅宗の寺院《おてら》を訪ねた時、幽寂《しずか》な庭に添うた廻廊で節子を思い出したことを書きつけたところもあった。....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
を諸人に教え伝えたのであろう。 虫の声、それを村園や郊外の庭に聴く時、たしかに幽寂の感をひくが、それが一つならず、二つならず、無数の秋虫一度にみだれ咽んで、い....
ねずみと猫」より 著者:寺田寅彦
っそりと静まりかえって月光の庭をながめている。それをじっと見ているとなんとなしに幽寂といったような感じが胸にしみる。そしてふだんの猫とちがって、人間の心で測り知....
小春」より 著者:国木田独歩
、この音がここでもかしこでもする、ちょうど何かがささやくようである、そして自然の幽寂がひとしお心にしみわたる! 自分はいつしか小山を忘れ、読む書にもあまり身が....
茶の湯の手帳」より 著者:伊藤左千夫
を汲み替うるにも強烈に清新を感ずるのである、客を迎えては談話の興を思い客去っては幽寂を新にする、秋の夜などになると興味に刺激せられて容易に寐ることが出来ない、故....
雪代山女魚」より 著者:佐藤垢石
に配して、それぞれ独特の食趣を舌に覚えるのである。 だが、山は無言である。谷は幽寂である、山女魚ひとりが、淋冷を破って、水面に跳躍する。なんと、人の釣意をそそ....
画道と女性」より 著者:上村松園
わず、葉の数なども実際のものはもっともっと混み合って繁っているのを、故意と単調に幽寂な味を見せようとしたものでした。 十月から着手してほぼ仕上ったのが、十二月....
河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
の修行者は、年紀にかかわらず頭を丸めていたのです――道理こそ、可心が、大木の松の幽寂に二本、すっくり立った処で、岐路の左右に迷って、人少な一軒屋で、孫を抱いた六....
穂高岳槍ヶ岳縦走記」より 著者:鵜殿正雄
わない、虫も鳴かねば、水音も聞えぬ、一行の興じ声が絶えると、森として無声、かくも幽寂しき処が世にもあろうかと思われた。九時、石造の堅き寝台に横たわった、が昼の労....