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「得体〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

得体の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
路上」より 著者:芥川竜之介
その刹那《せつな》、女の長い睫毛《まつげ》の後《うしろ》に、彼の経験を超越した、得体の知れない一種の感情が揺曳《ようえい》しているような心もちがした。が、そう思....
忠義」より 著者:芥川竜之介
たれまい。」 彼は昂然として、こう云った。そうして、今まで彼につきまとっていた得体《えたい》の知れない不安が、この沙汰を聞くと同時に、跡方なく消えてしまうのを....
或る女」より 著者:有島武郎
すまいけれども」 そう応《こた》えながら女中は、昨晩おそく着いて来た、ちょっと得体《えたい》の知れないこの美しい婦人の素性《すじょう》を探ろうとするように注意....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
意地強い恥しげな微笑を洩した。かの女は何と云い返そうかと、息を詰めた途端に、急に得体も知れない怯えが来た。 かの女は「パパ!」といって折よく来た逸作の傍へ馳け....
河明り」より 著者:岡本かの子
を小刀に心身を切りこま裂いて見せ、それで真実が届くやら、届かぬやら判りもしない、得体の知れない焦立たしいなやみの種を持つものは、割の悪い運命に生れついたものであ....
大宇宙遠征隊」より 著者:海野十三
た救援隊の到着するまで、うまく相手を防いでいるかどうか疑問である。何しろ相手は、得体の知れない火星人なのだ。 「困ったことになったぞ……」 辻中佐は、この馴れ....
崩れる鬼影」より 著者:海野十三
、なにもかも解らなくなったのです。 覚醒のあと 或るときは、月光の下に、得体の知れぬ鬼影を映しだす怪物、また或るときは、変な衣裳を着て闊歩する怪物、その....
巴里祭」より 著者:岡本かの子
の髄にまで喰い込んでいる此の廃頽は綺麗に拭い去られるような気がする。そしたら此の得体の解らぬ自分の巴里滞在期を清算して白髪のほつれが額にかゝる日本の妻のもとへ思....
アグニの神」より 著者:芥川竜之介
と、強くなって来るばかりです。と同時に妙子の耳には、丁度|銅鑼でも鳴らすような、得体の知れない音楽の声が、かすかに伝わり始めました。これはいつでもアグニの神が、....
蜜柑」より 著者:芥川竜之介
の心の上には、切ない程はっきりと、この光景が焼きつけられた。そうしてそこから、或得体の知れない朗な心もちが湧き上って来るのを意識した。私は昂然と頭を挙げて、まる....
麻畑の一夜」より 著者:岡本綺堂
易じゃあるまいと思われるんです。人間は無論ですが、猿にしても蛇にしても、あるいは得体の知れない猛獣にしても、この河を泳いでわたるのは大変でしょう。といって、河の....
」より 著者:岡本綺堂
た。それは狐か狢の仕業であろうということであった。夕方のうす暗いときに、なんだか得体のわからない怪獣がわたしの家の台所をうかがっていたといって、年のわかい女中が....
スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
ンパウダーは今はおどろきもしずまり、おとなしくなっていた。 イカバッドは、この得体の知れぬ深夜の道連れが気に食わなかったし、ブロム・ボーンズが「早駈けヘッセ人....
宝永噴火」より 著者:岡本かの子
土地を思い切り、美濃の檜木の瑞雲寺へ入って馬翁という詩僧に従ったのは、勿論、娘と得体の判らぬ心理の関係にある、その境地から逃れよう為もあったが、僧でもなく俗でも....
」より 著者:岡本かの子
せられた。それは口実なしに先方が返事を遷延してしまった。 室子はそういう場合、得体の知れぬ屈辱感で憂鬱になる。そして、自分に何か余計なものかもしくは足りないも....