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「心の臓〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

心の臓の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
女の決闘」より 著者:太宰治
一発一発と打つたびに、わたくしは自分で自分を引き裂くような愉快を味いました。この心の臓は、もとは夫や子供の側で、セコンドのように打っていて、時を過ごして来たもの....
蘭学事始」より 著者:菊池寛
いっぱいに気味悪く広がっている肺も、左肺の下から覗いている真っ赤な桃の実のごとき心の臓も、ターヘルアナトミアの絵図と、一分一点の違いもなかった。 良沢も玄白も....
右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
みろよ。おめえのようなあわて者では、いわれるまでわかるめえが、ねらわれたところは心の臓だ。ぶつぶつと小さな穴が乳下にあいているところをみると、あのおっかねえ山住....
名人伝」より 著者:中島敦
弧《ゆみ》に朔蓬《さくほう》の※《やがら》をつがえてこれを射れば、矢は見事に虱の心の臓を貫《つらぬ》いて、しかも虱を繋いだ毛さえ断《き》れぬ。 紀昌は早速《さ....
「享楽座」のぷろろぐ」より 著者:辻潤
その時 汝の尺八は幼稚なトロイメライを奏でて 汝の胸の冷蔵庫に秘められたドス黒い心の臓に 真赤な旋律を 点火するであろう 絶望と倦怠との餌食―― 酷薄な「生命」....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
は絶えていた。医者にもその死因は判然しなかった。恐らくかの幽霊におどろきの余り、心の臓を破ったのであろうと診断した。検視の役人も出張ったが、女の死体に怪しむべき....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
その眼の前に老人が、二つ目の獲物を掌に捧げ、冷静に青年を待っていた。 「銀盆を!心の臓!」こう老人は云ったものである。 二度高く釜鳴りがし、二度銀盆を胸に抱え....
出家とその弟子」より 著者:倉田百三
処女が、祝言の前晩に頓死するのもある、母親の長い嘆きとなるのも知らずに。麻痺した心の臓のところに、縫いかけた晴れ着をしっかり抱き締めたりしてな。あるいはつい先刻....
小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
にそびゆるを望める時、思いがけなき爪音聞こゆ。「ああ琴をひいている……」と思えば心の臓をむしらるる心地して、武男はしばし門外に涙をぬぐいぬ。今日は常よりも快かり....
宝島」より 著者:佐々木直次郎
て、己たちをこんなぶざまな目に遭わせやがった、老いぼれの不具だ。もう一人は、己が心の臓を抉り出してくれようと思ってる餓鬼だ。さあ、兄弟――」 彼は声を張り上げ....
明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
ホッと息をついて、一同にニッコリ笑いかけ、 「まるで今日はコクリサマにハラワタや心の臓をかきむしられたように苦しかった。いつもはこんなではないのだが、コクリサマ....
夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
よ。母親だよ。お常だよ。」 鶴見の実母はお常といった。 彼はその名を胸の奥の心の臓にきざみつけて、一生を守りどおして来たのである。忘れるどころではない。 ....
ムツェンスク郡のマクベス夫人」より 著者:神西清
られるものかどうかという、そこんところを、ちっとも考えちゃくれないんだ。おいらの心の臓はね、ひょっとすると、べっとり固まった血のりの中に、ずぶり浸っているような....
ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
貴様の世界だ。これが世界と云われようか。 貴様はこんな処にいて、貴様の胸の中で心の臓が 窮屈げに艱んでいるのを、まだ不審がる気か。 あらゆる生の発動を、なぜか....
女の決闘」より 著者:オイレンベルクヘルベルト
た時、自分が死ぬる覚悟で致しまして、それと同時に自分の狙っている的は、即ち自分の心の臓だという事が分かりました。それから一発一発と打つたびに、わたくしは自分で自....