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忍びやか
「忍びやか〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
忍びやかの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「影」より 著者:芥川竜之介
かりではない、その常春藤《きづた》に蔽《おお》われた、古風な塀の見えるあたりに、
忍びやかな靴の音が、突然聞え出したからである。
が、いくら透《すか》して見ても....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
ん。お母さんがちょいと、――」
今度は梯子《はしご》の中段から、お絹《きぬ》が
忍びやかに声をかけた。
「今行くよ。」
「僕も起きます。」
慎太郎は掻巻《かい....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
の悲しみを優しいまなじりにあつめたように、彼女はその眼をうるませて阿闍梨の顔色を
忍びやかに窺ったときに、老僧の魂《たま》の緒《お》も思わずゆらいだ。彼は生ける天....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
の、失礼でございますが、お店へあがりましてもよろしゅうございましょうか」と、女は
忍びやかに云った。 見ず識らずの女が夜ちゅうに人の店へあがり込もうというのは、....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
は立たなかった。大工の兼吉と店の若い者二人と、親類の総代が一人、唯それだけの者が
忍びやかに棺のあとについて行った。内福と評判されている津の国屋のおかみさんの葬式....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
半七も会葬者と一緒にそこまで送ってゆくと、寺の門内には笠を深くした一人の若い侍が
忍びやかにたたずんでいて、この葬列の到着するのを待ち受けているらしかった。 ....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
の燈籠の、媚かしく寂寞して、ちらちらと雪の降るような数ある中を、蓑を着た状して、
忍びやかに行くのであった。 柏家 三十六 やがて、貸切....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
き函が積みあげてあった。 「モシ、『深夜の市長』さん。――」 僕は内へ向って、
忍びやかに声をかけた。ところがどうしたのか幾度くりかえしても、何の応答もなかった....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
、姥殿はそこに居て舌が届く。(苦笑す。) 舌長姥思わず正面にその口を蔽う。侍女等
忍びやかに皆笑う。桔梗、鍬形打ったる五枚|錣、金の竜頭の兜を捧げて出づ。夫人と亀....
「怪しの館」より 著者:国枝史郎
つが裏門だな」 小走ろうとした時、トン、トン、トン、と、その裏門を外の方から、
忍びやかに叩く音がした。 と、一つの人影が、母屋の方から現われた。意外にも女の....
「深川女房」より 著者:小栗風葉
口を利く者もない。一座は化石したようにしんとしてしまって、鼻を去む音と、雇い婆が
忍びやかに題目を称える声ばかり。 やがてかすかに病人の唇が動いたと思うと、乾い....
「赤坂城の謀略」より 著者:国枝史郎
といえども、よもや夜討などかけまいと、安心しきって眠っていた。 と、正成たちは
忍びやかに、寄手の陣屋の前を通り、千早の方へ潜行した。 「誰だ!」 と突然声が....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
く美しく滑かに輝いた顔の持ち主であった。 姫が人にも洩らさず供をも連れないで、
忍びやかに館をぬけ出した行くさきを、彼はおぼろげに推量していたので、ほかの者ども....
「清心庵」より 著者:泉鏡花
にかかり、松の葉のこぼるるあたり、目の下近く過りゆく。女はその後を追いたりしを、
忍びやかにぞ見たりける。駕籠のなかにものこそありけれ。設の蒲団敷重ねしに、摩耶は....
「活人形」より 著者:泉鏡花
けたる一人の婦人、樹の下蔭に顕れ出でつ、やおら歩を運ばして、雨戸は繰らぬ縁側へ、
忍びやかに上りけるを、八蔵|朧気に見てもしやそれ、はてよく肖た婦人もあるものだ、....