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「忘却〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

忘却の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
じ屏風の、犬を曳《ひ》いた甲比丹《カピタン》や、日傘をさしかけた黒ん坊の子供と、忘却の眠に沈んでいても、新たに水平へ現れた、我々の黒船《くろふね》の石火矢《いし....
或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
の菩提《ぼだい》を弔《とむら》っている兵衛の心を酌《く》む事なぞは、二人とも全然忘却していた。 平太郎の命日は、一日毎に近づいて来た。二人は妬刃《ねたば》を合....
毛利先生」より 著者:芥川竜之介
は、その怪しげなモオニング・コオトで、これは過去において黒かったと云う事実を危く忘却させるくらい、文字通り蒼然たる古色を帯びたものであった。しかも先生のうすよご....
或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
用した事であろう。そうしてまた、如何に彼は、その放埓の生活の中に、復讐の挙を全然忘却した駘蕩《たいとう》たる瞬間を、味った事であろう。彼は己《おのれ》を欺いて、....
少年」より 著者:芥川竜之介
》には娑婆苦《しゃばく》を知らぬ少女のように、あるいは罪のない問答の前に娑婆苦を忘却した宣教師のように小さい幸福を所有していた。大徳院《だいとくいん》の縁日《え....
或る女」より 著者:有島武郎
よどんだ絶望的な悲哀にただわけもなくどこまでも引っぱられて行った。その先には暗い忘却が待ち設けていた。涙で重ったまぶたはだんだん打ち開いたままのひとみを蔽《おお....
或る女」より 著者:有島武郎
いたいという事だのが、思い入った調子で、下手《へた》な字体で書いてあった。葉子は忘却《ぼうきゃく》の廃址《はいし》の中から、生々《なまなま》とした少年の大理石像....
星座」より 著者:有島武郎
を見窮《みきわ》めたいあの好奇心と同じような気持で、おぬいは今見た夢のそこここを忘却の中から拾いだそうとし始めた。 母があれはおぬいではありませんときっぱり人....
地球発狂事件」より 著者:海野十三
き事柄を忘れたのであった。尤《もっと》もそのときドレゴ自身が、その事柄をすっかり忘却していたのだから、彼を責める訳にも行かないだろう。それは、昨夜ドレゴが熟睡中....
電気風呂の怪死事件」より 著者:海野十三
そうだ、井神陽吉が男湯の中で感電して卒倒した事件は、今の今迄、恐らく皆の脳裡から忘却されていたのであろう。それほど、一同は異常に狎れていた。それを今、電線の発見....
頭髪の故事」より 著者:井上紅梅
― 彼等は社会の冷笑、悪罵、迫害、陥穽の中に一生を過し、現在彼等の墓場は早くも忘却され、次第々々に地ならしされてゆく。わたしはこれらの事を記念するに堪えない。....
取舵」より 著者:泉鏡花
、「渡守」、「心なるらん」などの歌詞はきれぎれに打誦ぜられき。渠はおのれの名歌を忘却したるなり。 「いや、名歌はしばらく預ッておいて、本文に懸ろう。そうこうして....
晩春」より 著者:岡本かの子
めていた。晩春の午後の温かさが、まるで湯の中にでも浸っているように体の存在意識を忘却させて魂だけが宙に浮いているように頼り無く感じさせた。その頼り無さの感じが段....
仲々死なぬ彼奴」より 著者:海野十三
夕刻、脈膊も薄れて、眠るが如く大往生を遂げてしまった。 喜助少年は、今や前後を忘却して、大声をあげて、泣き喚きながら、老人の亡骸に縋りついた。 「おじいさん。....
雪柳」より 著者:泉鏡花
丸抜安です。それ、ばかされていましょう。ばかされながらもその頃までは、まだ前後を忘却していなかった筈ですが、路地を出ると、すぐ近く、高い石磴が、くらがりに仄白い....