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思い残す
「思い残す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
思い残すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
の上でお前さんの看病がとどいて癒れば重畳《ちょうじょう》、万一これぎりに死んでも
思い残すことはない。あたしはどうかしてお前さんをもう一度自分の手許へ引き戻そうと....
「恩讐の彼方に」より 著者:菊池寛
て成り申そう。御身の手にかかり、この洞門の入口に血を流して人柱となり申さば、はや
思い残すこともござりませぬ」と、いいながら、彼は見えぬ目をしばたたいたのである。....
「忠直卿行状記」より 著者:菊池寛
るばかりであった。 忠直卿は、自分の本当の力量を如実にさえ知ることができれば、
思い残すことはないとさえ、思い込んでいた。従って国主という自覚もなく、相手が臣下....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
ならば、主よ、アグネスをも召し給え」 クララは軽くアグネスの額に接吻した。もう
思い残す事はなかった。 ためらう事なくクララは部屋を出て、父母の寝室の前の板床....
「わが町」より 著者:織田作之助
の日にでも発って、マニラへ行こ思てるねん。君枝の身体ももうちゃんとかたづいたし、
思い残すところはない。ベンゲットの他あやんも到頭本望とげて、マニラで死ねるぞ」 ....
「単独行」より 著者:加藤文太郎
てしまうかも知れない。けれど正しいと思う方向へ向って歩いておれば、倒れたとて何を
思い残すことがあろう」とやがてAは室堂の出口の梯子を登って行きました。とはいえ、....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
支倉はとう/\男泣きに泣き崩れた。 「あゝ、わしはもう何にもいらぬ。もう何も
思い残す所はない。署長さんの手許にある金は全部お前に遣るから、後々の事を宜しく頼....
「家」より 著者:島崎藤村
の人の描いた画をこの部屋で眺められて、三吉叔父さんに御目に掛れれば、もう他に彼は
思い残すことが無いのだそうな……で、そのことを御友達に御話したら、それは造作もな....
「斜陽」より 著者:太宰治
ら、お互いに不幸よ。私はこれまで永いことお母さまと二人きりで暮したのだから、もう
思い残すことは無い。これから直治がお母さまとお二人で水いらずで暮して、そうして直....
「後の業平文治」より 著者:三遊亭円朝
よ、それでも文治の嫁が思ったより優しいので、何の位安心したか知れません、もう是で
思い残すことはありません」 此の時台所の方に当って頻りに水を汲んでは浴せる音が....
「水鳥亭」より 著者:坂口安吾
の残した本が、まア、いくらか、お役に立つでしょう。私はそれだけで満足です。ほかに
思い残すこともありません」 「梅村さん。戦争は何百万の雷をあつめたように、容赦し....
「明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
めにいくらか手荒なことをしてやった友情を分っていただけば満足です。私は、この世に
思い残すことはありません。あなたが、社の帳簿を調べなさったという話をうかがって、....
「桜の園」より 著者:神西清
うに)奥さまがお帰りになりました! お待ち申した甲斐あって。これでもう、死んでも
思い残すことはありませんわい。……(嬉し泣きに泣く) ラネーフスカヤ夫人、ガーエ....
「なよたけ」より 著者:加藤道夫
山の御加護によって、この東国の地にうまく実を結んでくれますれば、手前もう何ひとつ
思い残すこともなく、喜んで死ねるのでございますがな。 綾麻呂 む。やってみなさい....
「おせん」より 著者:邦枝完二
ものと、あきらめていた矢先、ほんとうによく来てくれた。あたしゃこのまま死んでも、
思い残すことはない。――」 「もし、吉ちゃん」 「おお」 「しっかりしておくんな....