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「悶える〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

悶えるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
婦系図」より 著者:泉鏡花
影も痩せたように、口のあたりまで振かかるのを掻い払うその白やかな手が、空を掴んで悶えるようで、(乳母来ておくれ。)と云った声が悲鳴のように聞えた。乳母が、(まあ....
俊寛」より 著者:菊池寛
と持ち堪える。魚はそのかかった針をはずそうとして、波間で白い腹をかえしながら身を悶える。そうした格闘が、半刻近くも続く。そのうちに、魚の力が弱ってくる。それでも....
吉原新話」より 著者:泉鏡花
鳩落な、蝮指の蒼い爪で、ぎりぎりと錐を揉んで、白い手足をもがもがと、黒髪を煽って悶えるのを見て、鳥ならば活きながら、羽毛を※った処よの。さて、それだけで帰りがけ....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
た方が効果的じゃないか。ああ、犯人はどうして僕に、糸と人形の?」としばらく懐疑に悶えるような表情をしていたが、「とにかく、人形を動かして見ることにしよう」と云っ....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
を摘んで伸びたときのうつくしい均斉。 それを追いもとめる目には通じない意志に、悶えるようなかなしそうな色がうかんでいる。 またドドは、ここへ来てから何ものか....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
の要求の実現できない永い悲哀が残るばかりである。恋い慕う心のみたされない苦しさに悶えるばかりである。 私は初めから小説などに描かれた恋愛に同感できるのはほとん....
海神別荘」より 著者:泉鏡花
やあ、胸へ、乳へ、牙が喰入る。ええ、油断した。……骨も筋も断れような。ああ、手を悶える、裳を煽る。 侍女六 いいえ、若様、私たち御殿の女は、身は綿よりも柔かです....
宇宙尖兵」より 著者:海野十三
作者より読者へ うれしい皇軍の赫々たる大戦果により、なんだかちかごろこの地球というものが急に狭くなって、鼻が悶えるようでいけない。これは作者だけの感じではあるまい。そこで、もっと広々とした....
夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
と、爺は、この縁前で打倒れた――急病だ。死ぬ苦悩をしながら、死切れないと云って、悶える。――こうした世間だ、もう以前から、村一統鐘の信心が消えている。……爺が死....
方子と末起」より 著者:小栗虫太郎
しい雨の朝だった。おゆうの病室になっている洋間のなかで、おゆうは、心臓を刺されて悶える色もなく、かすかに血を吐いただけで眠るように死んでいた。そして傍らには、祖....
「太平洋漏水孔」漂流記」より 著者:小栗虫太郎
にとっては安全の地ではない。いまこの地上に一寸の土地もなくなった。キューネはただ悶えるのみであった。そこへ、突然ハチロウがこんなことを云いだしたのだ。 「オジチ....
二葉亭追録」より 著者:内田魯庵
亭がかつて疑いがあるから哲学で、疑いがなくなったら哲学でなくなるといった通りに、悶えるのが二葉亭の存在であって、悶えがなくなったら二葉亭でなくなる。命のあらん限....
絶望より生ずる文芸」より 著者:小川未明
私にとっては文芸というものに二つの区別があると思う。即ち悶える文芸と、楽しむ文芸とがそれである。 吾々の此の日常生活というものに対して....
仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
だとすれば僅か七、八十年の人生は少々心細いものであります、死ぬのを諦め切れないで悶えるのももっともと思います。そうかと言って死ぬのを嫌がっても、人間は死ななけれ....
消えた霊媒女」より 著者:大倉燁子
れなのに、甞てはその人の心身共に自分がすっかり握っていたのだという安心を得ようと悶える。何という浅間しい事でしたでしょう。池の蛙が鳴いているのが風の合い間に聞え....