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「情慾〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

情慾の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
富士」より 著者:岡本かの子
もこんな男がいるのか。女は眼を瞠った。ただ顔立ちに似気なく厚肉の唇は生《なま》の情慾に燃え血を塗ったようだった。男は荒い毛の獣の皮を着ていた。その衣の裾が岩床に....
食魔」より 著者:岡本かの子
青年にも愚かしいものの持つ美しさがあって、それが素焼の壺とも造花とも感じさせる。情慾が食気にだけ偏ってしまって普通の人情に及ぼさないためかしらん。 一ばん口数....
河明り」より 著者:岡本かの子
ういう方面に触る話をしようとするものはなくなったほど、周囲の人間に肉感的なもの、情慾的なものの触手を収斂さす作用を持っていた。それで、娘が再び眼を上げて華やかな....
無惨」より 著者:黒岩涙香
は老人と見込を附ましたが猶お考え直して見ると第一老人は身体も衰え、従っては一切の情慾が弱くなり其代り堪弁と云う者が強く為て居ますから人を殺すほどの立腹は致しませ....
支倉事件」より 著者:甲賀三郎
どう云う告白だったか」 「支倉は彼の二階で妻の不在中、貞に按摩をさせているうちに情慾を起し、遂に貞の意に反して犯したる旨申しました。そうして小林に対して謝罪をす....
蒲生氏郷」より 著者:幸田露伴
な時もある、形式ずくめで定《き》まりきったような時もある、悪く小利口な代もある、情慾崇拝の代もある、信仰|牢固《ろうこ》の代もある、だらけきったケチな時代もある....
油絵新技法」より 著者:小出楢重
流派というものは元来画家が作らんがために製造した処の流派ではなく、やむにやまない情慾の発作によって、あるいは素晴らしい旧時代の退屈からの要求によってあらゆる絵画....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
の躯に憑るとは何の意義か?』 悪霊の憑依――地縛の霊魂は、依然として彼等生前の情慾と、性癖の大部分をそのまま保有して居る。彼等の体的欲望は、毫も消えた訳ではな....
潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
、褪せた歯齦を見ると、それに命を取る病気の兆候を見出したような気がして、年老いて情慾の衰えないことが、いかに醜悪なものであるか――如実に示されていた。 そのせ....
ガルスワーシーの家」より 著者:岡本かの子
をしながら大理石の彫刻のような顔の鼻柱に迫る両眼の生々しい輝きに時折り想い詰めた情慾のようなひらめきを見せてべールの間からガルスワーシー夫妻や二人の日本人達を交....
夜の構図」より 著者:織田作之助
俄かに恥かしい好奇心に満ちたものになってしまった。 「ホテルというやつは、へんに情慾的に出来てやがる」 と、苦笑した途端に、信吉はいきなり伊都子を想い出した。....
チベット旅行記」より 著者:河口慧海
小僧さんが種になっておかしい問題が起るです。昔高野山にあったようなああいう卑しい情慾を遂げる遂げぬという場合、すなわち彼らが自分の小僧を盗んだとか盗まれたとかい....
宝永噴火」より 著者:岡本かの子
てしまったような形跡である。こういう弛緩の状態に在っては、慧鶴青年自身、積極的に情慾の満足に嚮わないまでも、他からの異性の誘惑には脆い筈なのだ。慧鶴にその事はな....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
が争闘の主因たる成牝(カウ)たちは遥かな遥かな水平線の向うにいるのだ。 ブル即情慾である。彼らは本能そのものなのだ。衝動は自然だ。 全身をあげて彼らは搏つ、....
俗臭」より 著者:織田作之助
自分の奇妙な表情を洗面所の鏡にちらりと見て、千恵造は部屋に戻った。彼の顔は苦痛と情慾のために歪んでいた。その後たび/\逢引を重ねた揚句、元来心根の優しい春美は、....