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情火
「情火〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
情火の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「鯉魚」より 著者:岡本かの子
「ええ、何もかもおしまいだ、姫と駆落《かけおち》でもしてしまおう」こんな反動的な
情火がむらむらと起るので、自分ながら危なくて仕様がありません。これはいっそ、そっ....
「雪中富士登山記」より 著者:小島烏水
うに、この有毒植物の、刺戟強い濃紫は、焼砂の大壁を背景にして、荒廃の中に、一点の
情火を、執念《しつこ》くも亡ぼさずにいる。 太郎坊へ着いて見ると、戸は厳重に釘....
「文芸と道徳」より 著者:夏目漱石
ります。何しろ人間一生のうちで数えるほどしかない僅少《きんしょう》の場合に道義の
情火がパッと燃焼した刹那《せつな》を捉《とら》えて、その熱烈純厚の気象《きしょう....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
で実現しようとした折竹の快挙談。氷冥郷をあばく大探検にともなう、国際陰謀と美しい
情火のもつれを……。さて、彼に代ってながながと記すことにしよう。 大力女お....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
りにした時の、何かに憑かれたような気分はどこにも見られなかった。花火線香のような
情火が、いつまたどんな弾みで燃えあがるまいものでもなかったし、新らしい生活に一時....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
かお》に漲《みなぎ》っていた憂愁の色が一時に消えました。そうして炎々と燃えさかる
情火に煽《あお》られて、五体が遽《にわ》かに熱くなるのでありました。 「よく言う....
「老年と人生」より 著者:萩原朔太郎
って、明けても暮れても、セクスの観念以外に何物も考えられないほど、烈《はげ》しい
情火に反転|悶々《もんもん》することだった。しかもそうした青年時代の情慾は、どこ....
「詩の原理」より 著者:萩原朔太郎
スとアポロの対照である。即ち和歌の詩情は感傷的、感激的で、或るパッショネートな、
情火の燃えあがっているものを感じさせる。これに反して俳句は、静かに落着いて物を凝....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
ころを知らないものである。……欝勃たる覇気、一味の野性、休火山のような抑えられた
情火、これが彼の本態であった。しかし彼は童貞であった。どうして直接に思うことを思....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
しいまぼろしのあなたよ、わたしは何もかも知っています。あのダイヤモンドはあなたの
情火の反映です。しかもあの腕にはめている腕環こそは、あなたを縛る魔法の鎖です。そ....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
とした。方々へ行き、苦しい運動をし、舟を漕《こ》ぎ、歩行し、山に登った。が何物も
情火を消すにいたらなかった。 彼は情熱の手中にあった。それは天才の性質の必然性....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
めた顔には赤味がさしてき、声は疳高《かんだか》になってきた。その焼きつくすような
情火とその薪《まき》になってる惨《みじ》めな身体との対照を、クリストフは眼に止め....
「ジロリの女」より 著者:坂口安吾
るが、やっぱり全体どことなく薄く、白々と、父親の酷薄な気性をうけ、父の性もうけ、
情火と強情と冷めたさをつゝんで、すくすくと延びた肢体、見あきないものがある。 ....
「柳営秘録かつえ蔵」より 著者:国枝史郎
ったら、恋の仲間へは入らない。おりから季節は五月であった。蛍でさえも生れ出でて、
情火を燃やす時であった。蛙でさえも水田に鳴き、侶を求める時であった。梅の実の熟す....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
まだ骨の髄を走り※ってむずむずさせる。もっぱら二十歳前後の若い者が悩まされる恋の
情火のようだ。 十月二十日―― また一人|殺った。昼食を済まして、川端を歩い....