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「慈愛〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

慈愛の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
星座」より 著者:有島武郎
ことができる。 その父はいい父だった。少なくともおぬいにとっては汲みつくせない慈愛を恵んでくれた親だった。 「あれはどこからどこまであまり美しいから早死をしな....
婦系図」より 著者:泉鏡花
ませんで。)坂田が云ったを知ってるか。 馬鹿野郎、これ、」 と迫った調子に、慈愛が籠って、 「さほどの鈍的でもなかったが、天罰よ。先生の目を眩まして、売婦な....
生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
事だった。 今は東京の冬も過ぎて、梅が咲き椿が咲くようになった。太陽の生み出す慈愛の光を、地面は胸を張り広げて吸い込んでいる。君の住む岩内の港の水は、まだ流れ....
クララの出家」より 著者:有島武郎
りながら「アーメン」と心に称えて十字を切った。何んという貧しさ。そして何んという慈愛。 祭壇を見るとクララはいつでも十六歳の時の出来事を思い出さずにはいなかっ....
隣の嫁」より 著者:伊藤左千夫
。省作が気ままをすれば、それだけ母は家のものたちの手前をかねて心配するのである。慈愛のこもった母の小言には、省作もずるをきめていられない。 「仕事のやり始めはだ....
空襲葬送曲」より 著者:海野十三
水艦に乗組んで演習に出たきり、消息の知れないこと、もう四十日に近い。彼女は、母の慈愛をもって、幼時から信仰を捧げている浅草の観世音の前に、毎朝毎夕ひそかに額き、....
奇賊は支払う」より 著者:海野十三
ているだろうから、奇賊をして繭子夫人に一指をも染めさせないであろうと、善良にして慈愛に富む夫は述べたことだった。しかし夫人は夫君の説明の後で、烏啼天狗の脅迫状の....
火星兵団」より 著者:海野十三
恐しがられている大江山警視だったが、部下の身の上を思うその言葉の中には、限りない慈愛の心があふれていた。 「おれは、必ず生捕ってみせる。おれも生き物なら、相手だ....
神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
の上へ重ねました時、つい、それまでは不信心な、何にも知らずにおりました。子育ての慈愛をなさいます、五月帯のわけを聞きまして、時も時、折も折ですし、……観音様。」....
世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
、却ってそこに現われているこころよい安息と博愛とが、皇帝には温和な主婦のごとく、慈愛ふかい姉のごとく母のごとくにさえ感じられた。しかもその眼の力はだんだんに強く....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
られました。何にしろとても逢われないものと思い込んでいた肉親の祖父が、元の通りの慈愛に溢れた温容で、泣き悶えている私の枕辺にひょっくりとその姿を現わしたのですか....
怨霊借用」より 著者:泉鏡花
(お母さん、少しばかり。)黙って金箱から、ずらりと掴出して渡すのが、掌が大きく、慈愛が余るから、……痩ぎすで華奢なお桂ちゃんの片手では受切れない、両の掌に積んで....
瓜の涙」より 著者:泉鏡花
って、黄味も二つわけにして兄弟へ…… 萎れた草に露である。 ――今朝も、その慈愛の露を吸った勢で、謹三がここへ来たのは、金石の港に何某とて、器具商があって、....
夫人利生記」より 著者:泉鏡花
手が、手首から裂けて、中指、薬指が細々と、白く、蕋のように落ちていた。 この御慈愛なかりせば、一昨日片腕は折れたであろう。渠は胸に抱いて泣いたのである。 な....
今日になるまで」より 著者:上村松園
てて収入の範囲で、不自由なく暮せるようにしてくれたからでありました。私はこの母の慈愛を忘れることは出来ません。私が〈税所篤子孝養の図〉や〈母子〉など美人画にあま....