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「憂悶〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

憂悶の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
狂言の神」より 著者:太宰治
ぬる一秒まえまで曇らぬ。けれどもひそかに、かたちのことを気にしていたのだ。清潔な憂悶の影がほしかった。私の腕くらいの太さの枝にゆらり、一瞬、藤の花、やっぱりだめ....
死生」より 著者:幸徳秋水
くの不慮の死、覚悟なき死、安心なき死、諸種の妄執・愛着を断ち得ざるよりする心中の憂悶や、病気や負傷よりする肉体の痛苦を伴う死である、今や私は幸いに此等の条件以外....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
りした。而して彼女をも同じ波瀾に捲き込むべく努めた。斯等の手紙が初心な彼女を震駭憂悶せしめた状は、傍眼にも気の毒であった。彼女は従順にイブセンを読んだ。ツルゲー....
天馬」より 著者:金史良
あの妙な電信柱を知るようになって以来のことだった。殊に救いのないような孤独と深い憂悶の中に捉われている今の彼である。けれどとうとう明治製菓の近くに来るまで、つい....
死刑の前」より 著者:幸徳秋水
不慮の死、覚悟なきの死、安心なき死、諸種の妄執・愛着をたちえぬことからする心中の憂悶や、病気や負傷よりする肉体の痛苦をともなう。いまやわたくしは、これらの条件以....
原爆詩集」より 著者:峠三吉
、また現在にいたるまで死の恐怖と苦痛にさいなまれつつある人、そして生きている限り憂悶と悲しみを消すよしもない人、さらに全世界の原子爆弾を憎悪する人々に捧ぐ。 ち....
二つの途」より 著者:豊島与志雄
別れることは永久に失うことであった。彼は殆んど解く術のない矛盾に迷い込んだ。――憂悶の辺際《はて》に追い込まれた彼は、凡てを一つにまとめることが出来なかった。分....
オランウータン」より 著者:豊島与志雄
。 私は夜分おそく、その神社を通りぬけることが屡々あった。 私も人並に、胸に憂悶を持っていた。即ち、悲痛な恋愛とロマンチックな頽廃と、無力な反抗とだ。そのた....
太宰治との一日」より 著者:豊島与志雄
雌雄の分らない鶏も、酔後の彼の口癖だ。――そんなことで、その日も大笑いした。胸に憂悶があればこそ、こんな他愛もないことに笑い興じるのだ。 夜になって、臼井君が....
土地に還る」より 著者:豊島与志雄
のの一つとなりました。ただ、彼の農耕は、食糧を得るのが目的ではなく、謂わば内心の憂悶の吐け口だったのです。 彼は時間に充分の余裕がありました。郵便局は所謂三番....
二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
宏博なる知見を交換したのは、あたかも籠の禽のように意気銷沈していた当時の二葉亭の憂悶不快を紛らす慰藉となったらしかった。 ダンチェンコは深く二葉亭に服して頻り....
エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
、いまはすっかり吹き飛んでしまい、絶望に陥っているのが、誰の目にもよくわかった。憂悶に歪んだ彼の顔には、汗がたらたら流れていた。とうとう彼は知った――おれは破滅....
六号室」より 著者:瀬沼夏葉
幸福であったのです。』 『貴方の云うジオゲンは白痴だ。』と、イワン、デミトリチは憂悶して云うた。『貴方は何だって私に解悟だとか、何だとかと云うのです。』と、俄に....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
の青年期壮年期に殆ど出世ということをしないで初老を迎えたのだから、その間に焦燥し憂悶したのは尤もで、『大日本史歌人列伝』に、性狂燥で進取に急だと書いてあるのは事....
天才」より 著者:神西清
上にも、黄色い木の葉がくるくる舞いをするのが見える。さらば、夏よ! この大自然の憂悶は、もし画家の眼をもって観察するならば、また一種の美であり詩であるにはちがい....