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憂愁
「憂愁〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
憂愁の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「富士」より 著者:岡本かの子
るあとからあとから、藍墨の掃毛目の空は剥離して雲を供給する。峯はいつまで経っても
憂愁の纏流《てんりゅう》から免れ得ないようである。それを見ている翁は、心中それほ....
「みちのく」より 著者:岡本かの子
の上品な老婦人で耳もかなり遠いらしく腰《こし》も曲っている。だが、もっと悲劇的な
憂愁《ゆうしゅう》を湛《たた》えた人柄《ひとがら》を想像していたのに、極めて快活....
「東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
晴らす広漠とした河原に石と砂との無限の展望。初夏の明るい陽射しも消し尽せぬ人間の
憂愁の数々に思われる。堤が一髪を横たえたように見える。ここで名代なのは朝顔眼あき....
「鮨」より 著者:岡本かの子
客のなかの湊というのは、五十過ぎぐらいの紳士で、濃い眉がしらから顔へかけて、
憂愁の蔭を帯びている。時によっては、もっと老けて見え、場合によっては情熱的な壮年....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
、肩から背中に流れる線は、もしそこに見守る人がいたならば、思わずぞっとして異常な
憂愁と力とを感ずるに違いない不思議に強い表現を持っていた。 しばらく釘づけにさ....
「春の潮」より 著者:伊藤左千夫
気になった。臆病に慚愧心が起こって、世間へ出るのが厭で堪らぬ。省作の胸中は失意も
憂愁もないのだけれど、周囲からやみ雲にそれがあるように取り扱われて、何となし世間....
「鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
ンチストらしい眼を伏せ勝ちにして居る。隻脚――だがその不自由さも今はK氏の詩情や
憂愁を自らいたわる生活形態と一致させたやや自己満足の諦念にまで落ちつけたかに見う....
「河明り」より 著者:岡本かの子
かざしながら、その殷々の音を聞いていると、妙にひしひしと寂しさが身に迫った。娘の
憂愁が私にも移ったように、物憂く、気怠るい。そしていつ爆発するか知れない焦々した....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
のいろ気ではない。雛妓はわたくしに会ってから、ふとした弾みで女の歎きを覚え、生の
憂愁を味い出したのではあるまいか。女は憂いを持つことによってのみ真のいろ気が出る....
「妖僧記」より 著者:泉鏡花
手も拭い去るあたわざるなりけり。 読書、弾琴、月雪花、それらのものは一つとして
憂愁を癒すに足らず、転た懐旧の媒となりぬ。ただ野田山の墳墓を掃いて、母上と呼びな....
「橋」より 著者:池谷信三郎
をして、女が足を滑らせ、底知れぬ氷河の割目に落ちこんでしまったのです。男は無限の
憂愁と誠意を黒い衣に包んで、その氷河の尽きる山の麓の寒村に、小屋を立てて、一生を....
「阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
は追い馳けても来なかった。阿Qは六十歩余りも馳け出してようやく歩みを弛め心の中で
憂愁を感じた。洋先生が彼に革命を許さないとすると、外に仕様がない。これから決して....
「ある自殺者の手記」より 著者:秋田滋
ると私の生涯の懐かしい幾つかの小説が私をいつ果てるとも知れぬものの云いようのない
憂愁の中に沈めてしまった。この小説中の女主人公たちは今でも生きていて、もう髪は真....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
に知らぬ顔にて居たり。 予はこれまでにて筆を措くべし。これよりして悦び悲しみ大
憂愁大歓喜の事は老後を待ちて記すべし。これよりは予一人の関係にあらず。お梅(かの....
「金山揷話」より 著者:大鹿卓
う感慨もさることながら、距離と時間の観念がちぐはぐになったかんじだった。私は何か
憂愁を帯びた顔つきになっていたらしい。折から汽車が山の小駅を通過すると、 「ああ....