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「懶い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

懶いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
て、その後に続いた。そうして、伸子一人が残された室内には、しばらく弛みきった、気懶い沈黙が漂っていた――ああ、あの異常な早熟児が犯人だったとは。そのうち、歩き廻....
小田原陣」より 著者:菊池寛
溂たる陽春の気は野に丘に満ち、快い微風は戦士等の窶れた頬を撫でて居る。ともすれば懶い駘蕩たる春霞の中にあって、十万七千の包囲軍はひしひしと犇き合って小田原城に迫....
足迹」より 著者:徳田秋声
紅い顔をしたその西洋人が帰って来ると、お島さんもどこからか現われて来て、自堕落な懶い風をしながら、コーヒを運びなどしていた。 この叔母が飲んだくれの叔父に、財....
」より 著者:徳田秋声
あ、何でもいいから速く身軽になりたい。」 お銀は曇んだような目を光らせながら、懶い体を持ちあぐんでいた。 笹村も、一度経験したことのある、お産の時のあの甘酸....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
しい不安な荒んだ生活をしてきたのだ。それはあたかも霖雨のじめじめしい沼のような物懶い生活が今日も今日もと続いたのだ。欠席、乱酒、彷徨、怠惰、病気、借金、これらの....
棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
日のことであった。 折から桜花は故郷の山に野に爛漫と咲き乱れていた。どこからか懶い梵鐘の音が流れてくる花の夕暮、ミチミは杜に手を取られて、静かに呼吸をひきとっ....
」より 著者:池谷信三郎
かな花束に囲まれたことがあるのです。令嬢だと言えば、彼女は寝床も上げたことのない懶い良家の子女なのです。それが彼女の強い主観なのです。 問。そう解っていれば、被....
世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
沙汰止みになって、お客たちはもう帰宅する時刻だとは思いながら、筋肉にこびりついた懶い疲労にがっかりして、暫くそこに腰を下ろしたままであったが、それでもやがて闇の....
蜜柑」より 著者:芥川竜之介
へ倒れて行った。私は漸くほっとした心もちになって、巻煙草に火をつけながら、始めて懶い睚をあげて、前の席に腰を下していた小娘の顔を一|瞥した。 それは油気のない....
一週一夜物語」より 著者:小栗虫太郎
。雨に暴動、加えて湯気のようなおそろしい湿気です。 しかしそうした時、ごろごろ懶いままに転がっている姿は、だんだん心も獣のようなそれと同じになるのではないでし....
沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
まダンチョンも私も黙っている。幾時黙っていただろう? それでもやっとダンチョンは懶い声で話し出した。 私はダンチョンの話によって探検隊の一行が土人部落から一|....
地上」より 著者:島田清次郎
人間的な力をもって戸障子を踏み破り家中を荒れ廻った。大騒乱が家中の者を一人残らず懶い疲労した夢から奮い立ててしまった。白熱した昂奮が一しきり人々を内から照らした....
女房ども」より 著者:神西清
悲しげに軋り、釣瓶のぶつかる音もする。……クージカは身体一面に露を浴びて、睡くて懶いらしい。馬車の中に坐って、のろくさと長上衣を着ている。そして釣瓶の水が井戸の....
追放されて」より 著者:神西清
あふられて、雪が小屋へ舞い込んだ。誰も起きて戸を閉めに行く気はしなかった。寒いし懶い。 「俺はいい気持だ。」セミョーンがうとうとしながら言う、「こんな気楽なこと....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
れないように一斉にざわめく気配がする。爽かな風が河上から撫でるように吹いて来て、懶い眠から草木を醒して行く。頬白が鳴き出した。消え残りの火に薪を添えて顔を洗って....