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「懶げ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

懶げの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
蜜柑」より 著者:芥川竜之介
がごみごみと狭苦しく建てこんで、踏切り番が振るのであろう、唯|一旒のうす白い旗が懶げに暮色を揺っていた。やっと隧道を出たと思う――その時その蕭索とした踏切りの柵....
」より 著者:池谷信三郎
てしまった。 シイカはそれをしばらく見送ってから、深い溜息をして、無表情な顔を懶げに立てなおすと、憂鬱詩人レナウのついた一本の杖のように、とぼとぼと橋の方へ向....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
したようにまた起直った。 扱帯は一層しゃらどけして、褄もいとどしく崩れるのを、懶げに持て扱いつつ、忙しく肩で呼吸をしたが、 「ええ、誰も来てくれないのかねえ、....
婦系図」より 著者:泉鏡花
圧するようで、空気は大磐石に化したるごとく、嬰児の泣音も沈み、鶏の羽さえ羽叩くに懶げで、庇間にかけた階子に留まって、熟と中空を仰ぐのさえ物ありそうな。透間に射し....
黒百合」より 著者:泉鏡花
悔しげに口の内に呟いて、洋杖をちょいとついて、小刻に二ツ三ツ地の上をつついたが、懶げに帽の前を俯向けて、射る日を遮り、淋しそうに、一人で歩き出した。 「ジャム、....
飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
「何、昨夜から飲み続けて、余り頭が重いから、表へ些と出て見たのさ。」と、お葉は懶げに答えた。 「ほんとうに鉱山の人は忌ね。お酒を飲むと、無闇に悪巫山戯をして…....
紅毛傾城」より 著者:小栗虫太郎
在所を、じわじわ吐かせることに決めたのじゃ」 と言った横蔵の唇が、いつになく物懶げであったように、それから数日後になると、果たしてステツレルの出現と合わしたか....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
てしまった。が、その様子は、どうやら耳を凝らしているように思われた。刻々と刻む物懶げな振子の音とともに、地底から轟いて来るような、異様な音響が流れ来たのであった....
小公女」より 著者:菊池寛
を感じながら、ミンチン女史のそばに坐った時、自分と同じ年頃の少女が一人、明るい、懶げな青い眼でセエラをじっと見ているのにじき気が付きました。肥った、唇のつき出た....
チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
女たちは静かに戸より離れ、立ち止ってそっとその話を聴く。唯チチアネルロのみはやや懶げに、且つ気乗りせぬげに右手の方に群を離れて立ち、少女たちを眺めている様子。ラ....
支倉事件」より 著者:甲賀三郎
していた。松飾などは夙に取退けられて、人々は沈滞した二月を遊び疲れた後の重い心で懶げに迎えようとしていたが、それでも未だ都大路には正月気分の抜け切らない人達が、....
グーセフ」より 著者:神西清
る。また小舟が来る。これには肥ったシナ人が坐って、箸で米の飯を食べている。海面が懶げに揺れる。白い鴎が懶げに舞う。 「あの肥っちょの頸っ玉へ一つお見舞したいもん....
」より 著者:神西清
見つめた。素晴らしい表情は消え、眼つきはどんよりとして、ふうふう鼻を鳴らしながら懶げに呟いた。 「そう、そう……老人の繰り言だ、許し給え。……愚痴さ。……そう。....
田舎医師の子」より 著者:相馬泰三
白い手を執らぬばかりにして、こう云った。 こう云われて房子ははっとした。そして懶げに、とは云えいかにも懐かしげに、 「え。わたしはこの花が大変に好きなんですの....
太十と其犬」より 著者:長塚節
りして遁げて歩く。赤が吠える声は忽ちに遠くなって畢う。頬白が桑の枝から枝を渡って懶げに飛ぶのを見ると赤は又立ちあがって吠える。桑畑から田から堀の岸を頬白が向の岸....