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手套
「手套〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
手套の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「船」より 著者:島崎藤村
女と反対の側に腰掛けて行った。時々彼は何か捜すように、彼女の前髪だの、薄い藤色の
手套《てぶくろ》を脱《と》った手だのを眺めて、どうかするとその眼でキッと彼女を見....
「新生」より 著者:島崎藤村
「カロリイン夫人」は紅《あか》い薔薇《ばら》の花のついた帽子を冠《かぶ》り、白の
手套《てぶくろ》をはめ、朝から晩までその界隈《かいわい》を往《い》ったり来たりし....
「藁草履」より 著者:島崎藤村
葉を賜りまして、御車に召させられました。御通路の左右に集る農夫の群にすら、白の御
手套《おてぶくろ》を挙げて一々御挨拶が有りました。御附の人々、大佐、知事、馬博士....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
ると、引きちがえに 「母さん、ただいま帰りました」 と凛々しき声に前を払わして
手套を脱ぎつつ入り来る武男のあとより、外套と吾妻コートを婢に渡しつつ、浪子は夫に....
「一本の花」より 著者:宮本百合子
と、 「あなた、真直ぐおかえり?」 洒落《しゃれ》た紙入れを持ったクリーム色の
手套のかげで、時間を見ながら富貴子が訊いた。 「――何だかこのまんまお別れするの....
「一連の非プロレタリア的作品」より 著者:宮本百合子
はそれについて何を実感するであろうか。そのステッキの外見の瀟洒さ。流行。キッドの
手套。キャデラック。又は半ズボンと共に郊外の散歩。あるいは忽然として、自分のわき....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
か不思議な匂いがするね」と、教授は不安そうにあたりを見まわしながら言った。「君の
手套の匂いかね。幽かながらもいい匂いだ。しかし、けっして心持ちのいい匂いではない....
「小公女」より 著者:菊池寛
たのでしたが、今はセエラの贅沢な衣裳に押されている形でした。天鵞絨の服や、貂皮の
手套を着けたセエラは、いつもミンチン女史と並んで先頭に歩かされることになりました....
「塩花」より 著者:豊島与志雄
ったが、綺麗でさえあればよく、実際に使用することはないものだった。それから鹿革の
手套は今では自慢だった。他の如何なる布地のものも革のものも、彼に言わすればそれは....
「あなたも私も」より 著者:久生十蘭
ただひとつの色彩になっている。カオルは、ハンド・バッグのかわりにもなる、豹の皮の
手套《マフ》から右手をぬきだしながら、サト子のほうへ近づいて行った。 「こんなと....
「唇草」より 著者:岡本かの子
の仕切りの襖が開いて、縞のブラウズを着た千代重が悠然と出て来た。手にはゴムの洗濯
手套をはめている。「なんて頓狂な声です。赤ん坊が起きるじゃないか」 千代重がこ....
「豆腐買い」より 著者:岡本かの子
は辷りかけたショールを胸の辺で右手に掴み止め、合せ襟になった花と蔓の模様の間から
手套を穿めていない丸い左の手を出して陽に当てて見た。年中天候のどんよりして居た西....
「人形芝居に関するノオト」より 著者:竹内勝太郎
ゼリゼェの林のなかに二つの小屋があって、今でも日曜祭日毎に昔ながらのギニョール、
手套式の人形芝居が学校や家庭から解放された子供達を喜ばせて居る。その小さい粗末な....
「アイヌ宗教成立の史的背景」より 著者:知里真志保
演じられた仮装舞踊劇の詞章の中で、風の魔女に扮した者が、自ら「ぼろの礼冠、ぼろの
手套、われ身につけて」と歌っていることなどを思い合わせるならば、この妹の老婆とい....
「それから」より 著者:夏目漱石
海だとGが云った。しばらくすると、宣告文を書いた紙と、宣告文を持った、白い手――
手套《てぶくろ》を穿《は》めない――を角燈が照らした。読上げんでも可《よ》かろう....