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手鍋
「手鍋〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
手鍋の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「新生」より 著者:島崎藤村
中には「どてら」に脚絆《きゃはん》麻裏穿《あさうらば》きという風俗のものがあり、
手鍋《てなべ》を提《さ》げたものがあり、若い労働者の細君らしい人達まで幾人《いく....
「千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
それが小鍋に取替えられた。細君が芋を入れれば、亭主はその上へ蓋を載せる。私達は「
手鍋提げても」という俗謡にあるような生活を眼のあたり見た。 小猫は肉の香を嗅ぎ....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
ように苦笑した左膳は、 「それじゃア源三、しっかり萩乃さんをかあいがってやれよ。
手鍋さげてもの心意気でナ」 もう、とめるまはなかった。 病みほうけた源三郎が....
「道標」より 著者:宮本百合子
までも世間並の会社づとめやそこでの出世などにかかずらっているのだろう。それこそ、
手鍋下げても、いいであろうに、と。しかしさつき夫人にとって、自分さえいなければい....
「泣虫小僧」より 著者:林芙美子
のがよくなったわ」 「三石氏、どうなの? 可愛がられて貧乏すンのいいじゃないか。
手鍋をさげて奥山住いってこともある……」 「厭よッ! 可愛がってなンかくれやしな....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
れば、やすやすと抜けられる」 「七日は永いなあ」 「ナニ、永いことがあるものか、
手鍋さげても奥山ずまいという本文通りよ、結句《けっく》、山ん中が面白《おもしろ》....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
には、しおらしく嫁菜の花が咲残る。……あの戸口には、羽衣を奪われた素裸の天女が、
手鍋を提げて、その男のために苦労しそうにさえ思われた。 「これなる松にうつくしき....
「百姓弥之助の話」より 著者:中里介山
などに至ると、どんな腕前を見せた料理でも、弥之助自身が畑から取って来て荒らかに、
手鍋の中にぶち込んだ風味に及ぶものはない、それは海岸に於ける魚類に於ても云える事....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
た。 早や暗くなって、この田圃にただ一人の筈の、あの人の影が見えない。 浜で
手鍋の時なんかは、調子に乗って、 (お房さん。) と呼んだりしたが、もう真にな....
「生きるための恋愛」より 著者:宮本百合子
人間と人生を愛する心のうえにたって、男と女とが互いにひかれあう感情です。昔の人が
手鍋さげてもといったその感情は、とぼしいなかにも二人が希望のある、そして見通しの....
「ノンシャラン道中記」より 著者:久生十蘭
》わず、この八人の悪魔の突撃隊は、毎朝六時に眼を覚まし、真紅になってわめき立て、
手鍋《キャスロオル》をたたき、鬣狗《ジャカアル》のように吼《ほ》え、歯ぎしりし、....
「ノンシャラン道中記」より 著者:久生十蘭
によろめき左にのめくり、一|上《じょう》一|下《げ》、輾転反側。さればコン吉は、
手鍋《キャスロオル》の中で炒《い》られる腸詰のごとく、座席の上で転げ廻りながら、....