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抜けた
「抜けた〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
抜けたの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
ように赤く残しながら、見ているうちに、色が変わった。すると、相手もそのまま、力が
抜けたのか、侍の上へ折り重なって、仰向けにぐたりとなる――その時、始めて月の光に....
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
本の中の人物に変ることだった。彼は天竺《てんじく》の仏のように無数の過去生を通り
抜けた。イヴァン・カラマゾフを、ハムレットを、公爵アンドレエを、ドン・ジュアンを....
「伝吉の敵打ち」より 著者:芥川竜之介
《きっさき》を震《ふる》わしていた。浄観はその容子《ようす》を見やったなり、歯の
抜けた口をあからさまにもう一度こうつけ加えた。
「立ち居さえ自由にはならぬ体じゃ....
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
。が、黒い垢すりの甲斐絹《かいき》が何度となく上をこすっても、脂気《あぶらけ》の
抜けた、小皺《こじわ》の多い皮膚からは、垢というほどの垢も出て来ない。それがふと....
「十円札」より 著者:芥川竜之介
|身震《みぶる》いをしながら、クッションの上に身を起した。今もまたトンネルを通り
抜けた汽車は苦しそうに煙を吹きかけ吹きかけ、雨交《あめまじ》りの風に戦《そよ》ぎ....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
あの二人の女連《おんなづ》れが向うの桟敷《さじき》にいなくなった時、私は実際肩が
抜けたようなほっとした心もちを味わいました。勿論女の方はいなくなっても、縞の背広....
「奇遇」より 著者:芥川竜之介
時には知らなかったが、家《うち》には門が何重《なんじゅう》もある、その門を皆通り
抜けた、一番奥まった家《いえ》の後《うしろ》に、小さな綉閣《しゅうかく》が一軒見....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
はそう尋ねながら、相手の正体《しょうたい》を直覚していた。そうしてこの根《ね》の
抜けた丸髷《まるまげ》に、小紋《こもん》の羽織の袖《そで》を合せた、どこか影の薄....
「毛利先生」より 著者:芥川竜之介
そうに行きづまってしまう。そう云う時は、ただでさえ小さな先生の体が、まるで空気の
抜けた護謨風船《ごむふうせん》のように、意気地《いくじ》なく縮《ちぢ》み上って、....
「年末の一日」より 著者:芥川竜之介
らかうように「お前、もう十二時ですよ」と言った。成程十二時に違いなかった。廊下を
抜けた茶の間にはいつか古い長火鉢の前に昼飯の支度も出来上っていた。のみならず母は....
「保吉の手帳から」より 著者:芥川竜之介
ある心もちがした。機関兵はやはり敬礼した後《のち》、さっさと彼の側《そば》を通り
抜けた。彼は煙草《たばこ》の煙を吹きながら、誰だったかしらと考え続けた。二歩、三....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
うに、「どなたやらん、そこな人。遠慮のうこちへ通らっしゃれ。」と、力のない、鼻へ
抜けた、お島婆さんの声が聞えました。そこな人も凄じい。お敏を隠した発頭人。まずこ....
「百合」より 著者:芥川竜之介
継《つぎ》の当った金三の尻に、ほどけかかった帯が飛び廻っていた。
桑畑を向うに
抜けた所はやっと節立《ふしだ》った麦畑だった。金三は先に立ったまま、麦と桑とに挟....
「或る女」より 著者:有島武郎
ずも激しく波打った。そのあとはもう夢のようだった。
しばらくしてから葉子は力が
抜けたようになって、ハンカチで口もとをぬぐいながら、たよりなくあたりを見回した。....
「或る女」より 著者:有島武郎
自分に致命的な傷を負わしたと恨む心とが入り乱れて、旋風のようにからだじゅうを通り
抜けた。倉地がいてくれたら……木村がいてくれたら……あの親切な木村がいてくれたら....