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抜ける
「抜ける〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
抜けるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
ことは一度もなかった。が、中学から高等学校、高等学校から大学と幾つかの学校を通り
抜けることは僅《わず》かに貧困を脱出するたった一つの救命袋だった。尤も信輔は中学....
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
するとともに、彼の中にある芸術家は当然また後者を肯定した。もちろんこの矛盾を切り
抜ける安価な妥協的思想もないことはない。実際彼は公衆に向ってこの煮え切らない調和....
「河童」より 著者:芥川竜之介
膚の滑《なめ》らかな河童は容易に我々にはつかまりません。その河童もぬらりとすべり
抜けるが早いかいっさんに逃げ出してしまいました。ちょうど蚊のようにやせた体《から....
「温泉だより」より 著者:芥川竜之介
した。それから麦畑をぐるぐる廻る、鍵《かぎ》の手に大根畑《だいこんばたけ》を走り
抜ける、蜜柑山《みかんやま》をまっ直《すぐ》に駈《か》け下《お》りる、――とうと....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
宅の忰《せがれ》なんぞが受験準備をしているせいですな。――」
戸沢は台所を通り
抜ける時も、やはりにやにや笑っていた。
医者が雨の中を帰った後《のち》、慎太郎....
「羅生門」より 著者:芥川竜之介
の虱《しらみ》をとるように、その長い髪の毛を一本ずつ抜きはじめた。髪は手に従って
抜けるらしい。
その髪の毛が、一本ずつ
抜けるのに従って、下人の心からは、恐怖が....
「路上」より 著者:芥川竜之介
校《ぎょうせいがっこう》の制服を着た十《とお》ばかりの少年が、人ごみの中をくぐり
抜けるようにして、勢いよく姿を現した。そうしてそれが俊助の顔を見ると、いきなり直....
「魚河岸」より 著者:芥川竜之介
その内に我々はいつのまにか、河岸の取《とっ》つきへ来てしまった。このまま河岸を出
抜けるのはみんな妙に物足りなかった。するとそこに洋食屋が一軒、片側《かたかわ》を....
「保吉の手帳から」より 著者:芥川竜之介
た。
保吉はやっと立ち上った。ペンキ塗りの校舎に沿いながら、もう一度庭を向うへ
抜けると、海に面する運動場へ出た。土の赤いテニス・コオトには武官教官が何人か、熱....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
橋を渡るようなものだとは思いましたが、何しろ差当ってそのほかに、目前の災難を切り
抜ける妙案も思い当りませんから、明くる日の朝思い切って、「しょうちいたしました」....
「或る女」より 著者:有島武郎
絵島丸が横浜を抜錨《ばつびょう》してからもう三日《みっか》たった。東京湾を出
抜けると、黒潮に乗って、金華山《きんかざん》沖あたりからは航路を東北に向けて、ま....
「或る女」より 著者:有島武郎
ないと思案した。
双鶴館《そうかくかん》の女将《おかみ》はほんとうに目から鼻に
抜けるように落ち度なく、葉子の影身《かげみ》になって葉子のために尽くしてくれた。....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
られているのではないかという疑いを持たずにはいない。どうすればこの二重生活を突き
抜ける事ができるのだろう。生まれから言っても、今までの運命から言っても、おれは漁....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
ごく淋しい深山で、そして不思議に山彦のよく響く処でございました。漸く山林地帯を出
抜けると、そこは最う山の頂辺で、芝草が一|面に生えて居り、相当に見晴しのきくとこ....
「トロッコ」より 著者:芥川竜之介
る。――それは無理に我慢しても、鼻だけは絶えずくうくう鳴った。 竹藪の側を駈け
抜けると、夕焼けのした日金山の空も、もう火照りが消えかかっていた。良平は、愈気が....