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「擡げる〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

擡げるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
路上」より 著者:芥川竜之介
彼の考がここまで漂流して来た時、俊助は何気《なにげ》なく頭を擡《もた》げた。擡げると彼の眼の前には、第八番教室の古色蒼然たる玄関が、霧のごとく降る雨の中に、....
伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
廊下をばたばた、しとしとと畳ざわり。襖に半身を隠して老番頭、呆れ顔の長いのを、擡げるがごとく差出したが、急込んだ調子で、 「はッ。」 夫人は蒲団に居直り、薄....
式部小路」より 著者:泉鏡花
涼しい声で、 「はい、」といった。 「お差支はないでしょうか。」と、少しずつ顔を擡げる。 「御免なさいな、私は、あの、この家のものじゃないんですよ。」 「へ、何....
露肆」より 著者:泉鏡花
痛え、」 尾を撮んで、にょろりと引立てると、青黒い背筋が畝って、びくりと鎌首を擡げる発奮に、手術服という白いのを被ったのが、手を振って、飛上る。 「ええ驚いた....
雛妓」より 著者:岡本かの子
」 とばかり考え込んでしまった。 すると、雛妓は、この相談を諦めてか、身体を擡げると、すーっと座敷を出た。逸作は腕組を解き、右の手の拳で額を叩きながら、「や....
河明り」より 著者:岡本かの子
いと奥倉庫の間の架け渡しを、温室仕立てにしてあるもので、水気の多い温気が、身体を擡げるように籠って来るからでもあろう。 蘭科の花の匂いが、閉て切ってあるここま....
金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
く聞えた。湖水のここは、淵の水底からどういう加減か清水が湧き出し、水が水を水面へ擡げる渦が休みなく捲き上り八方へ散っている。湖水中での良質の水が汲まれるというの....
高原の太陽」より 著者:岡本かの子
ではないか。かの女の一般の若い生命を愛しむ母性が、この青年に向ってむくむくと頭を擡げる、この青年はどうかしてやらなければいけない。だがそう思う途端に、忽ちかの女....
米国の松王劇」より 著者:岡本綺堂
ひどく細かく見せて、団十郎式に刀をぬきました。ここでも首は見せません。首桶を少し擡げるだけでしたが、観客はみな恐れるように眼を伏せていました。 松王も千代も二....
俊寛」より 著者:菊池寛
いものであることを、俊寛は悟った。ほのかな麦の芽が、磽※な地殻からおぞおぞと頭を擡げるのを見たとき、俊寛は嬉し涙に咽んだ。彼は跪いて、目に見えぬ何物かに、心から....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
しまうのであろう」 一度は恐れ戦いてこの声にひれ伏した。が倨傲な心はぬっと頭を擡げる。 「いくら苦しくても、意義が不明でも、雲の中へ消え込んでも、その原因は私....
谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
蔓を這わせて、葛の三ツ葉が、青く重なり合い、その下から川の瀬音が、葉をむくむくと擡げるようにして、耳に通って来る、対岸の山を仰ぐと、斜めに截っ立った、禿げちょろ....
太十と其犬」より 著者:長塚節
つければ即時にくるくると捲いて決して其所を動かない。そうして扁平な頭をぶるぶると擡げるのみで追うて人を噛むことはない。太十も甞て人を打擲したことがなかった。彼は....
加護」より 著者:宮本百合子
るかと思うと……」 肩を震わせて二つの袂の中に泣き崩れたお恵さんは、やがて頭を擡げると、良人の遺骸の枕許にぴったりと寄添って、切れそうに唇を噛みしめながら、静....
対話」より 著者:宮本百合子
む。――騒ぐほどのことではないが万更でもない。久しぶりに俺の鞭も命を感じて鎌首を擡げるようだ。どれ、どれ。(にじり出した、宮の端から下界を瞰下《みおろ》す)一寸....