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散く
「散く〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
散くの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「鍵から抜け出した女」より 著者:海野十三
である僕に懸けられた莫大な賞金のことに違いなかった。 住民の中には、僕の方を胡
散くさそうに、ふりかえる者もあった。しかし僕は逸早く病院の寝衣を脱ぎすて、学生服....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
と、それが何かの気安めになったことを思い出したが、しかしその時は、どうかすると胡
散くさい彼女が離れて行きそうな仄かな不安を感じながらも、言われるままにじっと待っ....
「新世帯」より 著者:徳田秋声
そうもいかないさ。お国だって、さしあたり行くところがないんだからね。」と新吉は胡
散くさい目容をして、「それに宅だって、まるきり女手がなくちゃやりきれやしない。人....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
が風采と、煤竹色の被布を着て痛そうに靴を穿いて居る白粉気も何もない女の容子を、胡
散くさそうにじろじろ見て居た。然し田舎住居がしたいと云う彼の述懐を聞いて、やゝ小....
「惜別」より 著者:太宰治
外套を着て、いつも寒そうにぶるぶる震えて、いつか汽車に乗られた時、車掌は先生を胡
散くさい者と見てとったらしく、だしぬけに車内の全乗客に向い、このごろ汽車の中に掏....
「千早館の迷路」より 著者:海野十三
は、又千早館へ行く衆かね。やめたがいいね。悪いことはいわないよ」 婆さんは、胡
散くさそうに帆村とカズ子を見くらべていった。 「あ、お婆さん。親切にいってくれて....
「生死卍巴」より 著者:国枝史郎
したが、云いすてて門の方へ行こうとした。 邪魔がはいる 「お待ち」と勘右衛門は迂
散くさそうに云った。 「何だ何だ持っている物は?」 すると京助は首を振るように....
「イオーヌィチ」より 著者:神西清
になるでしょう、例えばそんな話をもちかけると、その相手でさえじろりと横眼でさも胡
散くさそうに彼を眺めて、『と仰しゃるとつまり、その時はみんなが往来で相手かまわず....
「沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
渡しましょう」 「よかろう」 とラシイヌは頷いた。そうして改めて土耳古美人を胡
散くさそうに眺めた後、レザールにそっと囁いた。しかしレザールにはその美人が怪しい....
「肌色の月」より 著者:久生十蘭
されているというのが現実らしい。 髪がグッショリと濡れしおり、枕とマトレスに胡
散くさい汚点《しみ》がついている。足が氷のようだ。 「寒い……」 と呟きかけた....
「金狼」より 著者:久生十蘭
て、なにか冷たいものでもと思って、いろいろ奔走してみたんです。でも、警察では、迂
散くさそうな顔をするばかりで、なんといっても受けつけてくれないんです。かんべんし....
「京鹿子娘道成寺」より 著者:酒井嘉七
の楽屋部屋の前を通りますので、見なれないお方でございますれば、すぐに、誰かが、胡
散くさい人が通る――という風に、注意し、後をもつけるでございましょうから。それに....
「深川女房」より 著者:小栗風葉
の行かぬ顔をして、「なぜね?」 「へへへ、でもお寂しそうに見えますもの……」と胡
散くさい目をしながら、「何は、金之助さんは四五日見えませんね?」 お光は黙って....
「真珠塔の秘密」より 著者:甲賀三郎
ょう」すかさず橋本は聞いた。 「駿河台の保命館に御出でしょうと思います」書生は迂
散くさそうに答えた。 「どうも有難うございました」礼を云って友は外へ出た。足は自....
「鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
を土にさしたまま、源内はヒョッと妙な顔をしてしまった。――というのは垣の外に、胡
散くさい人影が、しきりに辺りをうかがっていたからであろう。 「また嫌な奴が立ち廻....