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日陰
「日陰〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
日陰の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
三
猪熊《いのくま》のばばに別れた太郎は、時々扇で風を入れながら、
日陰も選ばず、朱雀《すざく》の大路《おおじ》を北へ、進まない歩みをはこんだ。――....
「忠義」より 著者:芥川竜之介
切ない神経の緊張を、感じさせるようになった。
修理《しゅり》は、止むを得ず、毎
日陰気な顔をして、じっと居間にいすくまっていた。何をどうするのも苦しい。出来る事....
「或る女」より 著者:有島武郎
ふと木部との恋がはかなく破れた時の、われにもなく身にしみ渡るさびしみや、死ぬまで
日陰者であらねばならぬ私生子の定子の事や、計らずもきょうまのあたり見た木部の、心....
「或る女」より 著者:有島武郎
……許してくださいまし……(そういううちに葉子はもう泣き始めていた)……私はもう
日陰の妾《めかけ》としてでも囲い者としてでもそれで充分に満足します。えゝ、それで....
「闇の書」より 著者:梶井基次郎
るのは季節を染め出した雑木山枯茅山であった。山のおおかたを被っている杉林はむしろ
日陰を誇張していた。蔭になった溪《たに》に死のような静寂を与えていた。 「まあ柿....
「本州横断 癇癪徒歩旅行」より 著者:押川春浪
《こわ》ければ、来生《らいせい》は土鼠《もぐらもち》にでも生れ変って来るがいい。
日陰の唐茄子《とうなす》の萎《しな》びているごとく、十分に大気に当り、十分に太陽....
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
。誰もたずねて来なかったという門番の話を聴いて林之助はまずほっとした。その日は一
日陰っていて、夕方から霧のような雨がしとしとと降って来た。急に袷《あわせ》が欲し....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
すから、お互いに碌なことは考え出しません。花鳥もなかなかいい女でしたが、何分にも
日陰の身の上ですから、自分が表立って働くことは出来ないので、お節を玉に使ってひと....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
その生長を阻害されることがあっても、やがてまた勢いよく延び立って、その競争者等を
日陰に隠し、結局ただ自己独りが生活能力をもつものだという表章を示してきたことを知....
「山と雪の日記」より 著者:板倉勝宣
る。昼は御馳走があるからみんなむきで、こげ飯でもなんでも平げてしまう。昼は大抵、
日陰の草の上で食うことにした。この小屋へ入ってから、みんな大変無邪気になった。そ....
「栃の実」より 著者:泉鏡花
た藁家を見て、朽縁へ※道を向うへ切って、樗の花が咲重りつつ、屋根ぐるみ引傾いた、
日陰の小屋へ潜るように入った、が、今度は経肩衣を引脱いで、小脇に絞って取って返し....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
「ね、特別に活きてるだろう。」 五 「何でも崖裏か、藪の陰といった
日陰の、湿った処で見着けたのね?」 「そうだ、そうだ。」 滝太郎は邪慳に、無愛....
「坑鬼」より 著者:大阪圭吉
地上には季節の名残りが山々の襞に深い雪をとどめて、身を切るような北国の海風が、終
日陰気に吹きまくっていようと云うに、五百尺の地底は、激しい地熱で暑さに蒸せ返って....
「夫人利生記」より 著者:泉鏡花
いわず、すぐに下駄ばきで卵塔場へ出向わるる。 かあかあと、鴉が鳴く。……墓所は
日陰である。苔に惑い、露に辷って、樹島がやや慌しかったのは、余り身軽に和尚どのが....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
前中に熱帯をこえて暖帯に入る。正午、北緯二十四度にあり。太陽は少しく南方に傾き、
日陰をやや北方に見るに至る。風力、風位ともに前日のごとし。船これに逆行して北進す....